待てば、もっと取れたはず――。そんな球界の声を承知の上で、タイガースはあえて時計を止めた。米スポーツ専門局「ESPN」(電子版)は7日、デトロイト・タイガースがタリク・スクバル投手(29)をロサンゼルス・ドジャースへ放出した大型トレードの内幕を報じた。今季のトレード期限は米東部時間3日午後6時(日本時間4日午前7時)。だがタイガースは期限ぎりぎりまで競合球団を競わせず、1日(同2日)の段階でドジャースとの取引を選んだ。
一見すれば「早過ぎる決断」だ。スクバルはア・リーグのサイ・ヤング賞を2年連続で受けた球界屈指の左腕。期限まで待てば、ブルワーズやレイズ、ヤンキースなどから条件をさらに引き上げられた可能性もあった。
それでも急いだのは、理由があるという。ESPNによれば、タイガースは他球団がスクバル一本に期限まで付き合う保証はないと判断。今季終了後にFAとなるスクバルに対し、より長く球団保有できる別の先発投手へ買い手が流れれば、一気に市場価値が下がることを警戒していた。開幕時は地区優勝候補だったが、5月に6勝22敗と大失速。7月29日(同のオリオールズ戦では7点差を逆転されて51勝58敗となり、球団は残留より放出で将来の戦力を確保する方向へ大きく傾いた。
そして最後に勝ったのがドジャースだった。見返りはリバー・ライアン投手(27)、ザイア・ホープ外野手(21)、ブレイディ・スミス投手(21)の3人。中でもタイガースは、100マイル(約161キロ)近い速球と多彩な変化球を持つライアンの先発としての伸びしろを高く評価。ホープも長打力を備えた有望株で、即戦力と将来性を同時に得られる組み合わせだった。
ブルワーズもルイス・ペーニャ内野手(19)を軸に複数選手を提示したが、タイガース首脳陣は最終的にドジャース案が自軍の再構築に最も合うと判断したという。
「なぜ、よりによってドジャースなのか」。球界最強クラスの戦力を持つ軍団へ、さらにスクバルを渡したことで批判が噴き出すのも無理はない。だがタイガースが恐れたのは「安売り」以上に、欲をかいて買い手そのものを失うことだった。早過ぎるように映った決断は、実は時間との勝負を読み切った結果だった。












