札束ではなく、有望株の山を積む覚悟が問われる「超大物案件」と評せるかもしれない。

 米スポーツメディア「ファンサイデッド」傘下のヤンキース専門メディア「YANKS GO YARD」は10日(日本時間同日)、デトロイト・タイガースのタリク・スクバル投手(29)を巡るトレード説が浮上する中、ヤンキースが背負うべき現実に切り込んだ。8月3日(同4日)のトレード期限を前に、ア・リーグ中地区下位に沈むタイガースがエース左腕を放出する可能性は、日に日に色を濃くしている。

 スクバルは直近2年連続でア・リーグのサイ・ヤング賞に輝いた球界屈指の左腕。獲得できれば、どの球団でも一気にポストシーズン仕様のローテーションへ変貌する。ただ、ヤンキースにとっては「欲しい」と「必要」は別問題だ。同メディアによれば、ヤンキースは以前、タイガースと交渉したものの、話し合いは早い段階で打ち切られたという。現状のヤンキースは先発陣がメジャー最高級の水準にあり、40勝26敗でア・リーグ東地区の首位争いを演じている。スクバル獲得は補強というより、ぜいたく品に近い。

 それでも火種がくすぶるのは、米専門局「MLBネットワーク」が示した想定パッケージが強烈だったからだ。同局はスクバル争奪戦の比較対象として、ヤンキースだけでなくドジャース、ブルワーズの獲得案も提示。その中で、ヤンキースが対抗するには、エルマー・ロドリゲス投手(22)、ダックス・キルビー内野手(19)、ベン・ヘス投手(23)という上位有望株3人の放出が必要になるとの見立てを示した。

 だが、同メディアはこれに猛反発した。ドジャース案は球団有望株ランキングでトップ30内の4位と6位を軸にした内容とされる一方、ヤンキース案はトップ5級の若手をまとめて差し出す形になる。つまり、同じスクバル獲得案でも、ニューヨーク側だけに負担が重くのしかかる構図で「釣り合いを欠く」というわけだ。

 もちろん、獲得後の構想が全くないわけではない。先発候補が厚くなれば、余剰戦力を救援に回し、懸案のブルペンを内側から補修する手もある。スクバルを先頭に据えたローテーションは、短期決戦では確かに破壊力満点だ。

 だが、タイガースにも弱みはある。今オフにFAとなるスクバルと長期契約を結べる保証は乏しく、今売らなければ得られる見返りは補償ドラフト指名権程度に落ちる。デトロイトが本当に売り手に回れば争奪戦は過熱するが、ヤンキースが法外な札を切る理由は薄い。名門が見据えるのは、夢の無敵ローテではなく、未来を削り過ぎない現実的な勝負手だ。