MLBの黄金期に、再び労使暗闘の黒雲が垂れ込めてきた。米メディア「ヤードバーカー」は1日(日本時間2日)、フィリーズのブライス・ハーパー内野手(33)が、2026年12月1日(日本時間2日)に失効する労使協定を巡り「オーナー側と選手会側が対立を深めれば、好調な球界の勢いを失いかねない」と警鐘を鳴らしたと報じた。焦点は、オーナー側が導入を求めるサラリーキャップ制。選手会が長年拒み続けてきた〝禁断の一線〟に、再び球界全体が近づきつつある。
オーナー側は2027年から、福利厚生費などを含めた年俸総額の上限を2億4530万ドル(約392億円)、下限を1億7120万ドル(約274億円)とする制度を提案。収入を球団と選手で折半し、ローカル放映権料も中央管理する案を掲げ、NFL、NBA、NHLと同様の仕組みに近づけようとしている。一方、選手会側は最低年俸を78万ドル(約1億2460万円)から150万ドル(約2億3960万円)へ引き上げ、年俸調停前選手への成果ボーナス拡充などを要求。低年俸層の底上げを柱に据えており、両者の出発点はすでに大きく食い違っている。
だからこそ、ハーパーの発言は重い。2度のナ・リーグMVPに輝いた球界屈指のスターは、米スポーツ専門局「ESPN」に対し「今の野球界は成功する絶好のチャンスをつかんでいる。この勢いを失ってはならない」と訴えた。選手側の立場をにじませながらも、オーナー側との決裂そのものが競技の熱を冷ます危険を直視している。
ハーパーは、近年のドジャースの巨大補強についても、単なる資金力だけで片づけなかった。潤沢な資金でスターを集める一方、ドラフトとマイナー育成にも優れていると指摘。大金を投じる球団を抑え込むことだけが、球界の未来を守る答えではないとの見方を示した形だ。むしろ勝つために投資し、育て、競争を生む球団経営までしばれば、ファンの関心を引き寄せている現在の流れにも確かに水を差しかねない。
サラリーキャップ制を巡る対立は、1994年のストライキとワールドシリーズ中止の記憶を呼び起こす。今回も交渉がこじれれば、27年シーズンへの影響、さらにはロックアウトの懸念が現実味を帯びる。球場に客が戻り、スター選手の市場価値も膨らむ中での衝突だけに、失うものはあまりに大きい。
ハーパーの警鐘は、単なるスター選手の私見ではない。好調な興行と選手価値の拡大を前に、MLBと選手会の溝がどこまで深いのかを浮き彫りにした一言だった。












