一度は消えかけた現役続行の火が、わずか一日で再びともった。元ドジャースでエンゼルス傘下3Aソルトレーク所属のクリス・テイラー外野手(35)が23日(日本時間24日)、引退を撤回した。MiLBの移籍記録では22日(同23日)に現役引退とされたが、MLB.comのレット・ボリンジャー記者によれば、実際には左前腕骨折によるマイナーの故障者リスト入りへ変更。復帰後は3Aでプレーを続ける見通しという。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」電子版「ON SI」は、テイラーが「なぜ引退しなかったのか」に焦点を当てた。ドジャースの黄金期を支えたテイラーは「名脇役」として知られ、2016年にマリナーズから移籍し、17年には打率2割8分8厘、21本塁打、72打点、OPS・850でブレーク。

 同年のナ・リーグ優勝決定シリーズMVPをジャスティン・ターナーと分け合い、21年のカージナルスとのワイルドカードゲームではサヨナラ本塁打を放った。外野だけでなく内野も守る起用幅で常勝軍団の隙間を埋め、大谷翔平投手(31)を中心に世界一を狙い続ける現在のドジャースにも受け継がれる強さの土台を支えた一人だった。

 だが、25年5月にドジャースから放出され、同月にエンゼルス入りした後は厳しい現実に直面した。昨季はエンゼルスで30試合に出場して打率1割7分9厘、OPS・598。今季も3Aで32試合、打率2割5分5厘、出塁率3割8分2厘、長打率3割2分1厘、0本塁打、15打点にとどまり、20日(同21日)に死球で左前腕を骨折した。35歳のベテランにとって、引退の二文字が浮かんでも不思議ではない状況だった。

 それでも撤回した意味は重い。これは感傷的な「惜別」の先延ばしではなく、その理由と狙いについて同サイトも「もう一度メジャーに戻るための時間稼ぎであり、体を治してから自らの価値を再提示するという意思表示」と解説している。

 エンゼルスで上を目指すには、経験と複数ポジションをこなす守備力をもう一度売り物にするしかない。ドジャースのロバーツ監督は一度報じられた引退を受け「素晴らしいキャリアを築いた。素晴らしいチームメートだった」とたたえたが、本人の物語はそこで閉じなかった。次の舞台は故障者リスト明けの3A。ドジャース黄金期を知る男は、華やかな花道ではなく、泥くさい再昇格ルートを選び直した。