【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】黄金の…何だ、あれは? 忘れもしない開幕して間もない3月30日。ドジャー・スタジアムのビジター側のクラブハウスに足を踏み入れるなり、視界の左側に飛び込んできた。金色の風船が数字の「1」と「0」の形をしていたので、誰かの10年アニバーサリーということはすぐに分かった。

 隣の空きロッカーにはワイン、選手らのサイン入りテキーラボトル、手紙、「HEDGES」と背番号の「27」がデカデカと光る仕組みの立体オブジェなどの贈り物がズラリ。普段、ロッカーの写真は撮れない決まりだが、オースティン・ヘッジズ(通称ヘッジー)が惜しげもなく「どうぞどうぞ」と、うれしそうに報道陣に許可してくれた。順番に並び、うまく撮ろうと目線を少し上げたところで、ある物にクギ付けになった。木製プレートにゴールドの〝何か〟が、それこそクギ付けにされていた。

「あれは、まさか…」。まじまじと見つめていると「ふふふ。なかなかセンスあるよね」とヘッジー。その〝何か〟とは、捕手である彼にとって試合中に大事なところを守ってくれるファウルカップの黄金版だった。

 贈り主が分からないと話していると、後ろにいたガーディアンズの関係者(匿名希望)が名乗り出た。唯一無二の特別な物を贈りたいと熟考した末「スプリングトレーニング中に金色のスプレー缶を買ってきて、庭で吹きかけて作った」と明かすと、ヘッジーが飛び上がって感謝の熱いハグ。こうした一つひとつの場面からも、愛される人柄であることが分かる。

 翌日、10周年を迎えた特別な日に立ったフィールドの感想を聞くと「フルサークルだったんだ。ロス出身の父と一緒に幼い頃からドジャースファンで、この球場に通っていたから、試合中もたくさんのフラッシュバックがあった。このドジャー・スタジアムで、ワールドチャンピオンを相手に勝ったし、2安打できたし、チームメートらからいっぱい愛をもらった。特別な日になればいいと願っていて、本当にそれがかなってしまった。シナリオでもこんなにうまくは書けないよね」と幸せそうだった。

「野球は、人生をそのまま映し出すような競技だと思う。人生って思い通りにはいかないし、予想した通りにもならない。その中でどうポジティブに対応するか、毎日同じ自分でいられるかを試されるんだ。この競技を通して、自分が何者なのか、これからどうあるべきかを教えられた気がする」

 包容力がある彼なら、もう少し踏み込んで聞いても大丈夫そうだと思った。あなたは何者で、どうあるべきなのか?

 ヘッジーは少し考えてから「自分はみんなが大好き。人を助けることが大好き。人生がいかに大変か、僕自身もよく分かっている。それは今ここに自分がいられるように支えてくれた人たちのおかげなわけで、そんな人々がいてくれたことが自分にとって人生で一番大切なことだった。だから、それを次の人に返していくのが自分の責任だと思っている。これまで自分にしてくれたリーダーやベテランたちと同じことを、自分もやる。それが毎日なろうとしている自分だよ」

 そんな彼だから、後輩からもらった手紙が一番うれしかったのだろう。

「彼にとって僕がどんな存在かを書いてくれた。それが自分にとって一番大事なことなんだよね。〝誰かの人生に影響を与えられているかどうか〟。僕はデビッド・フライを本当に尊敬しているから、そういう言葉をもらえたことがとても心に響いた」

 手紙は額に入れ、他の贈り物と一緒に大切に飾るそうだ。

 ☆オースティン・ヘッジズ 1992年8月18日、カリフォルニア州出身。2011年のMLBドラフト2巡目(全体82位)でパドレスに入団。15年5月にメジャーデビューし、トレードやFAでインディアンス(現ガーディアンズ)、パイレーツ、レンジャーズを渡り歩き、23年オフにガーディアンズに復帰。キャリアのカウントには在籍日数などさまざまな条件があり、メジャーリーガーのキャリア平均年数は「2・7年」とのデータもある。183センチ、100キロ。