勝ちに不思議の勝ちあり…。こんな言葉を連想させる曇天の広島での1勝だった。阪神が4日の広島戦(マツダ)を延長10回、1時間開始遅延プラス1時間1分の雨天中断を含む5時間ゲーム(実際の試合時間は3時間59分)で7―5と逆転勝利。いみじくも、かつての虎将であり、藤川球児監督(45)が阪神に入団した当時の指揮官・野村克也氏の言葉のような勝利で開幕から8戦6勝とダッシュに成功している。

 9回に3点差を追い付き、10回は木浪聖也内野手(31)の決勝2ランでつかんだ勝利。劇的と言えばそれまでだが、この試合は「執念の逆転勝ち」で片づけられるほど単純な内容ではなかった。不思議な勝ちの中身にある根拠。それは広島の拙守、福島圭音外野手(24)の快足、木浪の打棒だったはずだ。

 3点を追う9回、先頭・木浪が森浦から左前打で出塁すると、続く坂本は三塁・小園の失策で無死一、二塁。福島の死球で満塁となり、代打・伏見の三塁ゴロで2点差とした。場面は二死二、三塁となって中野が左前打を放つと、二走・福島がヘッドスライディングで同点のホームを陥れた。

9回二死、中野の安打で同点のヘッドスライディング生還となった阪神・福島圭音(左)
9回二死、中野の安打で同点のヘッドスライディング生還となった阪神・福島圭音(左)

「思い切りいけた結果ですね。集中が切れる時もあったが、入れ直して、それが最後にできたかな」と話した木浪。開始の遅延、中断を挟んでも終盤にスイッチを入れ直した。そして、藤川監督が使い続けた福島も前夜のプロ初安打から、この日は9回に快足で同点となる得点を記録。固定された5番まで、だけではなく下位打線まで機能しだせば、敵からすれば阪神はさらにやっかいなチームだろう。

 5回3失点でビハインドのまま降板した広島キラー・大竹に負けがつかなかったことも、不思議さを象徴していた。雨で開始が遅れ、5回には長い中断。ゲームはすでに成立しており、あのまま阪神の負けもあった状況だった。カープがファンブルした勝利への糸口を奪い取り、勝ちに変えた底力は本物だろう。

 優勝候補の実力に加え、しぶとさと運も味方にしてしまえば2026年の藤川阪神はセ界を独走しかねない。「まだまだどういう形になるのかわからない」と虎将はチームづくりの途上を強調したが、強さは隠せない。まだまだ気が早いのだが、5日にヤクルトが敗れ、阪神が勝てば首位だ。