日本が右往左往する必要はない――。第6回WBCで過去ワーストとなるベスト8で敗退した侍ジャパンに、本紙専属評論家の伊原春樹氏が「原点回帰」を提言した。敗戦を受けて「ピッチクロック」「ピッチコム」さらには「ロボット審判」まで〝メジャー流〟の導入を求める声が大勢を占める中、あえて「日本野球の伝統を壊すな」と主張した真意とは…。
【新鬼の手帳・伊原春樹】侍ジャパンはよく戦った。優勝したベネズエラを相手に、長距離移動後の初戦となった準々決勝で5―8で敗れた。
振り返ってみれば前回大会(2023年)の準決勝・メキシコ戦も3点差をつけられたが、7回に吉田正尚(現レッドソックス)の3ランで追いつき、逆転サヨナラ勝利を飾った。日本に1本が出ていれば、また違った展開になっていただろう。
井端監督は救援投手のケガや招集拒否、エース・山本由伸(ドジャース)の球数制限など、数多くの条件下で最善を尽くしたと思う。もちろん日本は2連覇を目指していただけに、敗因を分析するのは当然だろう。「ピッチクロック」「ピッチコム」に慣れておらず投手、打者ともに不利だったとの論調も多かった。
だが、それを受けて「日本のプロ野球にもすぐに導入するべきだ」というのは少し違う。私は「原点回帰」こそが必要だとみている。
現在、プロ野球では投手も打者も時間をかけ、間合いや〝ため〟をつくっている。しかし、熱戦を繰り広げている選抜高校野球を見ればすぐに分かるが、投球間隔は十分に短い。イニング間の全力疾走もそうだが、もともとはそのスピードでやっていた選手がプロに入って遅くなっただけ。現行ルールのままでも、いざという時の対応は可能だろう。
また、WBCの準決勝・米国―ドミニカ共和国戦では「疑惑の1球」で試合が終了し「自動ボール・ストライク(ABS)チャレンジシステム」、いわゆる「ロボット審判」の導入を求める声が高まった。今季からメジャーで導入されることから、28年のロサンゼルス五輪や次回のWBCでも採用されることだろう。
これに合わせてNPBでも「ロボット審判」の導入を求める声が出ているというが、これにも私は「反対」の立場だ。
プロ野球の魅力はやはり「人間対人間」にある。そこには当然、審判も含まれる。審判によってストライクゾーンが広かったり、逆に狭い傾向がある。「今日の審判は〇〇だから広めにいこう」「今日は△△か。ゾーン内で勝負しよう」とミーティングで話し合うのも人間味があっていいのではないか。
国際大会ではその時にルールに対応すればいい。日本が長い年月をかけて育ててきた独自の野球文化を、1試合の敗戦だけで大幅に変更する必要はないだろう。(本紙専属評論家)
【大谷翔平も見解「世界で勝ちたいなら…」】投球時間に制限が設けられる「ピッチクロック」はWBCだけでなくMLBをはじめ、韓国や台湾のプロ野球でもすでに取り入れられている。
今大会終了後、NPBの今後のあり方について大谷(ドジャース)は「世界で勝ちたいなら、導入するべきだともちろん思う。我々は我々の野球をするんだ、と思っているのであれば、別に変える必要はないのかな」と持論を述べた。
次回のWBCは29年か30年の開催が検討され、今大会では過去最多となる「161万9839人」の観客が動員された。














