ヤンキース主将の口から出たのは「フラストレーション」だった。だが、同じクラブハウスにいる一方の主力は「イライラするとは思わない」と否定――。今オフのヤンキースに漂うのは補強の是非以上に〝温度差〟のようだと、インド系の米メディア「スポーツキーダ」がクローズアップしている。

 発端はフロリダ州タンパで行われているヤンキースのスプリングトレーニングで17日(日本時間18日)、主将のアーロン・ジャッジ外野手(33)が語った率直な本音だった。今オフのストーブリーグにおいて他球団が次々と動く中、ヤンキースの出足が遅かったことを「フラストレーションがたまる」「小さな動きが続いていた」と表現。特に昨秋の地区シリーズでブルージェイズに敗れた記憶が生々しいことからも、「今すぐ戦力を足したい」という焦りがにじんだ。

 ところが同じ問いを向けられたスタントンはジャッジとは対照的に、あくまでも冷静だった。「何か起きていないか確かに確認していた。興味はある。でもイライラするかと問われれば…。いや、そうじゃない」

 ジャッジの言葉を真正面から否定こそしなかったものの「フラストレーション」という、いら立ちの火種だけは丁寧に消した。

 チーム周辺の空気もかなり微妙だ。地元放送局「YES」のヤンキース中継でもおなじみの名物アナウンサー、マイケル・ケイ氏は、ジャッジの発言を「〝受動的かつ攻撃的〟なニュアンスに聞こえた」と困惑。その矛先は主将の感情ではなく周囲の反響を顧みない、メッセージの出し方そのものに向けられた。

 もっとも、ヤンキースが「何もしていない」わけではない。オフの序盤にはトレント・グリシャム外野手(29)が、単年2202万5000ドル(約34億2000万円)のクオリファイング・オファーを受諾してチーム残留。さらに1月にはコディ・ベリンジャー外野手(30)と5年総額1億6250万ドル(約252億1000万円)で再契約し、前線の厚みを確保した。

 13日(同14日)にはFAとなっていたポール・ゴールドシュミット内野手(38)も引き留め、1年契約も正式発表。派手さよりも堅実さで、とりあえず戦力確保に成功している。

 それでもジャッジが焦るのはライバルチームが次々と戦力をアップさせ、今季も厳しい戦いとなりそうなア・リーグ東地区の現実だろう。だからこそ、スタントンの〝火消し〟は意義深い。補強への不満が内向きに燃え広がれば、春を待たずにチームの芯が揺れる。主将のいら立ちは正直さの証し。対するベテランの否定は、優勝への距離感を保つための〝処方箋〟となるからだ。ヤンキースの「沈黙の冬」は、ようやく結論だけを手にして開幕へ向かう。