【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】野球におけるオランダという国を初めて意識したのはWBCだった。2013年にベスト4入りした際に「あれ、ヨーロッパの国なのに準決勝まで進んできた」と失礼ながら素朴に思ったのだ。
オランダ王国を構成するカリブ海の自治国も含まれると知り、ドミニカ共和国やプエルトリコ、キューバなどの影響が頭に浮かび、多少合点がいった。キュラソーの存在を知ったのもこの時だ。ちょうどこの頃からキュラソー出身選手が台頭してきたので、小さい島ながら野球大国というイメージが定着していった。問題はアルバだ。
「アルバの方がナイスさ」。そう笑ったのは、島では知らない人がいないザンダー・ボガーツ。歴代6人いる同島出身のメジャーリーガーのうち5番目に大リーグ入りし、なかなか長期間活躍できる選手がいなかった中で、今なお歴代最長キャリアを更新し続けている。
「自然が多くて、特にビーチはアルバの方がきれい」と、お隣のキュラソーへの小さなライバル意識を感じなくもなかったが、そこは否定していた。口数は多くなく、端的に答えるタイプなのだろうか。捕まえるのは大変だったが、落ち着きがあり、どこかリーダーの風格を漂わせていた。
アルバといえば、ニューヨークからリゾート目当てで訪れる人も多いカリブの観光地という印象。キュラソーを旅した際、米国からはアルバ経由が手ごろで便数も多かったため2泊したが、面積は約180平方キロメートルで1日あれば車で1周できてしまう。島の西側のビーチ一帯にはオールインクルーシブな高級リゾートホテルが立ち並び、米国人の観光客が多い。
アルバ観光局の発表によれば、2025年11月の観光客のうち、米国出身者は75%超。キュラソーが強めのオランダ色なら、アルバは北米チェーンなども多く、どこか米国っぽさがある。レンタカーで借りたジープで東側へ足を延ばすと、未開発の岩礁と乾いた荒野が広がっていた。島の南側には大きな国立公園や鍾乳洞などもあった。
ただ、これほど走り回ったにもかかわらず、野球場は一つも目に入らなかった。
「この環境でどうやって野球選手になったの?」とザンダーに聞くと「うちの島はリトルリーグのワールドシリーズにここ2年連続で出てるんだ。若くしてうまい選手がたくさんいるし、みんな野球を楽しんでいる」。これまで人気だったサッカーを抜き、野球は1番人気になりつつあるという。野球場は規模の差こそあれ、15以上あるらしい。リトルリーグはオランダ代表というくくりではなく、国別対抗だ。
「たぶん他の国より試合数は少ない。人口も多くないしね。でも、子供たちがワールドシリーズに出られているってことは、きっと何かうまくやっている証拠なんだと思う」
人口約10万人の島で育つ少年たちは、野球のために国外へ遠征するのが当たり前だという。興味深いのは、アルバの野球協会が子供たちの渡航費を負担する仕組みがあること。親の経済的負担が少ないため、ザンダーが母子家庭でも、双子の兄のジャイアーと切磋琢磨しながら野球に明け暮れることができた理由の一つでもある。
憧れの大リーガーの存在。国の抜群のサポート体制。まさにこれから花開こうとするアルバ野球の未来に、ザンダーの4度目のWBC出場がさらなる弾みをつけそうだ。
☆ザンダー・ボガーツ 1992年10月1日生まれ、オランダ領アルバ出身。アマチュアFAで2009年5月にレッドソックスに入団。13年8月にメジャーデビュー。同年から17年、23年のWBCにオランダ代表で出場。FAとなった22年12月にパドレスと11年総額2億8000万ドル(約392億円=当時)の大型契約を締結。オールスターには4度出場(16、19、21、22年)。188センチ、99キロ。












