【球界こぼれ話】11月中旬に差し掛かり、野球界はオフシーズンに突入した。ファンにとっては少し寂しい季節となるが、今季活躍した選手らは今後、多忙な日々を送ることになる。都内を中心に各地で表彰式が開催されるからだ。

 現代のプロ野球では数多くの賞が設けられている。近年は評価される部門が細分化されていることもあり、年々増え続ける傾向にある。ただ、その数が増えても依然として日本野球界には「ある部門」に関しての賞がない。シーズンを通して複数ポジションを守った選手をたたえる「ユーティリティー賞」だ。

 すでに米メジャーでは2022年から複数ポジションをこなす野手を対象にした「ゴールドグラブ賞」がある。そんな状況もあり「日本でもこの賞を早く新設すべきではないか」との声が現場の選手からもちらほら聞こえ始めている。

日本ハムの郡司裕也
日本ハムの郡司裕也

 近年のプロ野球はチーム事情や戦略の多様化により、複数のポジションをこなす選手が増えている。例えばパ・リーグでは今季、内外野を守り首位打者に輝いたソフトバンク・牧原大成やシーズンを通して捕手、一塁、三塁、左翼、中堅をこなした日本ハム・郡司裕也がその代表格と言えるだろう。彼らの存在はもはやユーティリティーという枠を超え、チームの勝敗を左右する重要な役割を担っている。だが、その貢献度に見合った守備面の評価は十分とは言い難いのではないか。

 かつての球界では守備位置の固定が基本。チームの主力や名手と呼ばれる選手は一つのポジションを極め、チームを支え続けることが一般的だった。だが、現代野球は豊富なデータもあり柔軟性が求められる。故障者や選手の相性によりスタメンや攻守布陣を入れ替えることも当然のように行われる。こうした現状を踏まえれば、万能選手が一つのポジションにこだわる職人より評価されても不思議ではない。その意味でもユーティリティー選手に何らかの賞やタイトルを創設するのは時代の流れともいえる。

 今も昔もプロ野球では本塁打を量産する長距離砲やエースとしてチームを支える先発投手らが注目されがちだが、淡々と複数ポジションをこなす選手たちのチームへの貢献もその活躍に匹敵する。

 黒子役のユーティリティー選手にも光が当たる球界へ――。そんな機運が高まることを祈るばかりだ。