洗練された「無心」の思考が勝利に結実した。ソフトバンクは15日に日本ハムとの「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第1戦(みずほペイペイ)で延長10回の末、2―1で劇的なサヨナラ勝ちを収めた。アドバンテージ1勝を含めて通算成績2勝0敗とし、パ・リーグ覇者がCS突破へ優位に立った。
執念の一打だった。同点の10回一死満塁の絶好機で、ここまで無安打だった山川穂高内野手(33)に打席が回った。相手ベンチは投手を玉井にスイッチ。代わりばなの難しい状況だったが、山川は「振ってみないと分からない」と初球を思い切りスイングした。高くバウンドした打球が三塁手の頭上を抜けていくサヨナラ打となり、山川は右手を高く突き上げてチームメイトから祝福を受けた。小久保監督も「山川が決めてくれた」と背番号5をたたえた。
シーズン中はなかなか好機で一本が出なかった。山川はこの日の打席に向かった心境について「状況判断しすぎても集中できなくなっちゃう時もある。満塁とかはあまり考えずに。シーズン中は多く考えすぎて得点圏がちょっと、というかかなり悪かったので」と振り返った。
打席で考え過ぎてしまう――。優れた思考力を持つ山川だからこそ抱え込んでいた悩みだった。選手の思考を整理する伴元裕メンタルパフォーマンスコーチ(40)は山川の特性をこう説明する。「(山川は)思考力が高い人で、これまでにいろんな成功体験を持っている。だから、どこに集中しようかとなった時に人よりも選択肢がすごく多い。集中する要素がたくさんあるといいパフォーマンスが出ない」。試合状況、相手、自身の打撃フォーム…。多くの引き出しを持つことで、それが逆に足かせとなった。
今は「無心」に近い状態まで思考を洗練し、打席での重心のかけ方や球を潰すことなど、思考を究極まで絞り込んだ。伴コーチは「考えようと思えばいくらでも考えられちゃうことが逆にしんどかったと思う。でもその経験があったから、今はシンプルに絞るところまで来ている」と現在の状態を語った。
殊勲打は確かに泥臭い一打だったが、短期決戦では結果が何よりも重要。「ラッキーですね。このヒットはかなり大きい」と謙虚な言葉とともにニヤリと笑った山川。チーム、そして自らが勢いづくには十分なサヨナラ打だった。












