優勝の裏で一番苦しんだ男かもしれない。ソフトバンクが2年連続21度目のパ・リーグ制覇を成し遂げた。昨オフ、長年に渡って正捕手を務めてきた甲斐拓也捕手(32)が巨人にFA移籍。すっぽりと開いた大きな穴を懸命に埋めようともがき続けたのが、ポスト甲斐の筆頭候補と目されていた海野隆司捕手(28)だった。

 今季は開幕マスクを谷川原に譲る苦しいスタートだったが、優勝を決めた27日の敵地・西武戦(ベルーナ)で歓喜の瞬間をグラウンドで迎えた。正直な感想は「ホッとしました」。そこに笑顔はほとんどなかった。

 試合後「自分が成長したという実感はない」と語り、シーズンを次のように振り返った。「最初は周りからいろいろと比べられることが多かったんで、正直キツかったです。最後こういう結果に終わったんで良かったですが、とにかく最初がキツかった…。もうそういうことを考えないように、自分のできることだけに集中した。あとは投手のためにっていう気持ちだけでやってきました」。出てくる言葉に苦悩がにじんだ。

Vの瞬間、胴上げ投手の杉山一樹(中央右)に飛びついたソフトバンク・海野隆司
Vの瞬間、胴上げ投手の杉山一樹(中央右)に飛びついたソフトバンク・海野隆司

 それでもコツコツとチームの信頼を積み上げてきた28歳は、シーズンが進むにつれて存在感を増していった。勝負の9月、先発マスクは21試合のうち16試合。「自信も余裕も出てきたという実感はあります。こうやって9月を戦えていることは最高です」。

 辛抱を強いられた今季。シーズン中に壁にぶつかった際は、甲斐に直接相談の連絡を入れ、アドバイスを求めた。甲斐が抜けたことは出場機会を増やす一方で、大きな重責に押しつぶされそうになる日々の連続だった。

 連覇に安堵感をにじませた海野。「シーズンが終わるまで頑張ります」。ヒリヒリする場数を踏んで大きく成長する機会がこの先も待っている。海野の台頭――。間違いなく、光を当てるべき存在だった。