〝母の覚悟〟が大一番への切符を引き寄せた。カーリングの2026年ミラノ・コルティナ五輪最終予選日本代表候補決定戦(11~14日、北海道・稚内市みどりスポーツパーク)で、フォルティウスがロコ・ソラーレ(LS)、SC軽井沢クラブとの三つどもえを制し、世界最終予選(12月、カナダ・ケロウナ)への出場を決めた。大活躍したスキップ・吉村紗也香(33)は、競技と育児の両立に奮闘中。二足のわらじを履くことで得た飛躍の要因を明かしていた。

 4日で8試合という過酷な日程で生き残ったのはフォルティウスだった。SC軽井沢クラブとの決勝第3戦(14日)は、5―5で迎えた第10エンド(E)に吉村が最終投でナンバー1のストーンを獲得。重圧のかかる状況下でチームが一丸となってストーンを導いた。

 今大会の初日(11日)はまさかの連敗スタート。負けたら終わりの戦いが続くも、五輪への執念が吉村の心をつなぎとめた。「それぞれの強い思いが、一つひとつのプレーやショットにも出ていた。それを常にこう持ちながら、最後もみんなで決めるんだと強い思いで投げた」と喜びを口にした。

 ジュニア時代から名スキップとして注目を集めた吉村は2020年5月に結婚し、23年12月には第1子男児を出産した。カーリング界にはLSの代表理事を務める本橋麻里氏、フォルティウスの船山弓枝コーチなど、出産後も競技を続ける先駆者がいた。吉村も周りのサポートを受けながら、出産から2か月後に氷上練習を再開。24年8月に復帰すると、大黒柱としてチームをけん引してきた。

 選手に戻ってからは遠征や大会で家を空けることが増えた。「やっぱり長く子供と離れなきゃいけない時が出てくるし、自分も子供と離れるというか、遠征や大会に行く前はやっぱり寂しい気持ちとかはある」と本音を吐露する。一方で、二足のわらじを履く中で新たな感情も芽生えた。

 以前のようにカーリングに100%を注ぐことは難しいが「育児モード、競技モードみたいなメリハリをしっかりつけられるようになっている」と意識の変化を強調。「競技に専念できるのは周りの支えのおかげだし、すごくありがたい気持ちもある。自分としても子供に寂しい思いをさせているし、好きなことをさせてもらっているので、しっかり結果を出したいという気持ちがより一層高くなっている」と愛息の存在が大きな原動力となっているのだ。

 常呂高(北海道)時代から夢見た五輪の舞台には、まだ一度も届いていない。10年バンクーバー五輪を皮切りに、過去4度の挑戦はいずれもあと一歩のところで涙を飲んだ。5度目の挑戦となる今回は、8チームが参加する世界最終予選で上位2チームに入れば五輪へのチケットが手に入る。「しっかりと五輪の出場権を獲得して、自分たちの目標である五輪で金メダルというところに向かって頑張っていきたい」と力を込めた。

 開きかけた扉を閉ざすわけにはいかない。1児の母として、自らの背中であきらめないことの大切さを伝えてみせる。