【女子プロレス最強レスラーの告白 神取忍 お前の心を折ってやる(21)】1993年に全日本女子プロレスの北斗晶らと対抗戦で戦い、92年に旗揚げしたLLPWも軌道に乗ってきた。思い切ったことをしたくて、94年7月14日に東京体育館でビッグマッチを行うことに。メインはブル中野対神取忍。実は「コイツはすごい」とずっと認めていた人。戦いたかった相手なんだ。

左からあいさつする神取忍、立野記代、イーグル沢井、ブル中野、井上貴子ら
左からあいさつする神取忍、立野記代、イーグル沢井、ブル中野、井上貴子ら

 ダンプ松本との極悪同盟時代のことは全然知らない。バリカンで髪の毛を半分刈ってて「ああ、いるね~」っていう感じだった。でもジャパン女子時代の90年11月に全女の横浜文体大会でブルがアジャコングと金網デスマッチをやって、4メートルの金網の上から飛んだと聞いて信じられなくて。「本当に飛んだの?」と記者に聞いたら「本当だ」と。他団体の試合なんてテレビで見ないんだけど見てみたんだ。覚悟、プロ意識がすごいなと。骨折してもおかしくないのに。人生、何かを背負っているって分かる。

 機は熟した。ビッグマッチの相手はブルしかないと思って、申し入れた。形式はチェーンで互いをつないだ「チェーンデスマッチ」。「デスマッチなんてやったことないくせに」っていろいろ言われ、また火が付いた。

 はっきり言って、それまでの試合のベストマッチだったと思う。チェーンデスマッチって「名勝負は生まれない」「凡戦が多い」って言われているんだけどね。今までにないことやろうってことで、チェーンを長くしたんだ。6メートルだよ。リングの端から端へ行けるし、コーナーから落ちることもできる。でもその分、頭を使わないといけなくてね。ロープの出入りはお互い同じところから出ないと引っかかってしまうから、場外に出ても冷静に動いたよ。

 実は、あの時は目をケガしていて、かなりまずい状態だった。でもブルは攻めてきた。こっちも反撃したけど、強かったよ。しまいには、ブルは脚にチェーンを巻いた状態でポスト上からダイブ。必殺技のギロチンを目に落とされた。わざわざチェーンを巻いてね。チェーンを長くして「失敗した」と思った。ブルがドーンと落ちてきた。一瞬で視界が真っ暗になった。来ると分かっててもすごい恐怖を感じた。「目をつぶされた」って。プロレス人生終わったと思った。意識が飛んで一瞬「ここどこだ?」。目を開けてやっと「あ、試合だったんだ」と分かったけど、もう後の祭り。痛みだけが残った。

 大会は約8300人の超満員で成功。でも負けて悔しかった。ただデスマッチで名勝負になって「ほらね」って感じ。「無理だよ」という否定的な声をひっくり返したんだ。相手がブルだったからできたと思う。自分の動物的本能は正しかった。ブルはプロ中のプロだよ。そして団体として新しい挑戦に臨むんだ。