男子短距離界に新星が現れた。陸上男子100メートルの守祐陽(21=もり・ゆうひ、大東大4年)は、3日の富士北麓ワールドトライアル予選3組で自己ベストの10秒00をマーク。世界選手権(9月13日開幕、東京)の参加標準記録(10秒00)を突破し、初の日本代表入りに大きく前進した。今季は5月に追い風参考ながら9秒97を記録。実力、知名度ともに急上昇中のスプリンターに、本紙が単独インタビュー。期待の星の素顔に迫った。
富士北麓ワールドトライアルは予選2組で桐生祥秀(日本生命)が9秒99を記録。大歓声が沸き起こる中でも、次組の守は冷静だった。
守 レース前日(2日)は何となく調子がいいなという感じがあって、当日の朝のアップでどんな結果かは分からないけど、ベストは絶対出ると確信していました。桐生選手が9秒台を出したので、参加標準記録を出すならこのタイミングしかないかなと。ここを逃したらもう無理だなと思ったけど、変に狙いにいったらダメなので、自分のレースをしようと考えていました。
陸上を始めたのは中学からと決して早くはない。地道な努力で道を切り開いた裏には、亡き母の存在があった。
守 ちょっと重くなってしまうけど、母を高校1年生の頃にがんで亡くしていまして…。陸上を頑張るきっかけの一つは母で、生前に母が「インターハイ(全国高校総体)に行ってね」と言ってくれたのもあるかな。がんがわかったのが中学生の頃。母を喜ばせるためにと言ったらあれだけど、記録を出すと喜んでくれた。レース前も毎回天国で母が見てくれていると思いながら臨んでいます。
高校時代までは同期の栁田大輝(東洋大)、井上直紀(早大)らの陰に隠れていたが、大東大で才能が開花。世界選手権ではさらなる好タイムを目指す。
守 9秒台まであと一歩というところまで来たので、もちろん(9秒台を)出すなら世界陸上の舞台でと思っています。10秒00を出したレースは後半で足を踏み外したところが1個あったので、トップスピードが出た中での動きをもう1回確認したいですね。まだ修正する点はあるし、踏み外したことはレース中にわかっていたので、そこが改善されればチャンスはある。あと1か月間で調整して過去最高の状態に持っていきたいです。
そんな守を周囲も全力でサポート。守がアルバイトで働くカフェチェーン「タリーズ」東松山店の店長は、守の競技スケジュールを第一に考えたシフトを組んでいるという。
守 コーヒーが好きなのもあるけど、バイトをやり始めたのは今までスポーツしかやってこなかったので、社会のことを勉強したいと思ったのがきっかけです。店長さんは融通を利かせてくれるし、試合がある時は「頑張ってね」と言ってくれるので、いいバイト先だなと思っています。ちなみに、おすすめは水出しコーヒーです(笑い)。
画面越しから見つめたパリ五輪から1年。次は自分が日の丸を背負う番だ。
【守は代表選考の2番手】男子100メートルの世界選手権出場枠は最大で3。現時点で参加標準記録を突破しているのは桐生、守、サニブラウン・ハキーム(東レ)、清水空跳(星稜高2年)の4人だが、日本陸連の選考基準では日本選手権の順位が高い選手が優先される。日本選手権を制した桐生の代表入りは確実で、同7位の守は2番手。同2~6位の複数選手が参加標準記録を突破しなければ、守も代表入りとなる。サニブラウンは日本選手権で予選落ちのため、現時点では3番手。4番手の清水は世界ランキングで圏外のため、代表入りには有効期間の24日までにサニブラウンの自己ベスト(9秒96)を超えるタイムを出す必要がある。
☆もり・ゆうひ 2003年12月14日生まれ。千葉県出身。小学校ではサッカーに取り組み、中学校から陸上をスタート。18年全国中学校体育大会の200メートルに出場した。市立船橋高3年時には21年全国高校総体(インターハイ)で100メートル8位入賞。大東大進学後は21年東京五輪代表の多田修平(住友電工)らと練習に励んでいる。5月の関東学生競技対校選手権では追い風参考ながら9秒97をマークした。172センチ、67キロ。













