2025年6月3日に亡くなった長嶋茂雄氏を偲び、同氏の第2次巨人監督時代を振り返った連載「ハダカの長嶋巨人」。常に話題の中心にいた「ミスター」を取り巻く人たちを含めた群像劇を、当時の東スポ巨人担当記者がつづります。

【ハダカの長嶋巨人#19・緒方耕一の巻】

 第2次長嶋政権1年目の1993年、自身2度目の盗塁王に輝いたのが緒方さん。この年の巨人は松井秀喜のルーキーイヤーで、原、篠塚、吉村もまだ健在。さらにはモスビー、バーフィールドの両助っ人に、駒田、川相、岡崎、一茂、元木…と多士済々の顔ぶれが揃っていた。

 激しいレギュラー争いでスタメン出場を続けるのも厳しい状況の中、着実に盗塁数を積み重ねていった緒方さんが、野手ではチーム唯一のタイトルホルダーに輝いた。

 翌94年には西武との日本シリーズ第5戦で放った、伝説の満塁本塁打が今も語り継がれている。その後は故障がちで98年に30歳の若さでユニホームを脱いだが、引退後は巨人、日本ハム、ヤクルトのコーチや、侍ジャパンのコーチとしてもその手腕を発揮。まだまだコーチとしての再復帰があるような気もしている。

本塁にすべり込む緒方。左はヤクルトの古田敦也(1991年、東京ドーム)
本塁にすべり込む緒方。左はヤクルトの古田敦也(1991年、東京ドーム)

 現役当時の緒方さんといえば、人気選手揃いの巨人にあって、女性人気ナンバーワン。失礼ながらチャラくて軽そうな先入観を持っていた。だが、実際に話してみると、印象は正反対。「何か面白いネタない?」とちゃめっ気たっぷりに声をかけてくるかと思えば、こちらの質問にはまじめに答えてくれるし、浮いた噂のひとつも聞かない。「紳士たれ」の球団訓を地でいくような人だった。

 そんな緒方さんに今でも申し訳なく思う事件が、95年の宮崎春季キャンプで起きた。

 巨人の選手宿舎の青島グランドホテルは当時、一般客も宿泊可能。キャンプ期間中は選手目当てのファンが同じホテルに泊まることができた。選手の部屋と同じフロアに立ち入ることはできなかったが、それでも地下1階の大浴場はOK。選手と同じ風呂に入ってハダカの付き合いができるという意味では、ファンにとっては最高の環境だったろうが…。

 ある日、その大浴場の脱衣場で、選手のパンツが次々に盗まれるという連続窃盗事件が発生してしまったのだ。

 そこで実際、パンツを盗まれたという緒方さんに、詳しい話を聞いてみると…。「いやあ、まいっちゃいましたよ。今は自衛のため、大浴場にはパンツをはかないで行くようにしています」と証言してくれた。そのコメントを入れて記事を会社に送ったところ、翌日の東スポ1面記事はこうなってしまった。

「巨人緒方 僕は変態じゃない ノーパンでホテル内をかっ歩!」

 売店で新聞を見ると「巨人緒方 僕は変態」となる作りだった…。

 それでも緒方さんは「勘弁してくれよ~」と言いながらも、笑って許してくれた。

 それにしても…。あの時のパンツ泥棒の真のターゲットは一体、誰だったのだろう。もう時効なので東スポまで一報いただけるとうれしいです。