2025年6月3日に亡くなった長嶋茂雄氏を偲び、同氏の第2次巨人監督時代を振り返った連載「ハダカの長嶋巨人」。常に話題の中心にいた「ミスター」を取り巻く人たちを含めた群像劇を、当時の東スポ巨人担当記者がつづります。

【ハダカの長嶋巨人#20・高橋由伸の巻】

 高橋由が2016年シーズンから巨人の監督を務めることになった際、長嶋巨人時代を担当していた者にとっては、感慨深いものがあった。ルーキー時代と比べると、年齢を重ねてかなり丸くなった印象を受けるが…。次回の監督就任時には、由伸本来の「熱さ」を発揮して、思う存分に采配を振ってもらいたいと思う。

 入団当初、長嶋監督は由伸に「ウルフ」というニックネームをつけたが、これはさっぱり定着しなかった。思うに、周囲が期待した由伸のイメージは「スマート」「プリンス」「天才」というもので、それとかけ離れていたからではないか。

 だが、長嶋監督が見抜いていたように、由伸の本質は「荒々しい野獣」だったように思う。ケガをも恐れずフェンスに激突するプレーを何度も見せつけられ、自信を持って見送ったボールを「ストライク!」とコールされれば、審判をにらみつける。その姿はまさに「ウルフ」そのものだった。

現役引退セレモニーで長嶋監督(右)からメッセージ入りのボールを渡された高橋(2015年11月、東京ドーム)
現役引退セレモニーで長嶋監督(右)からメッセージ入りのボールを渡された高橋(2015年11月、東京ドーム)

 カッとなる性格を指摘された時「しょうがないですよ。すぐに顔に出ちゃうんだから」としょんぼりしていた姿は今も印象に残っている。由伸もまた、周囲の期待するイメージに応えようと、悩んでいたのだろう。

 ただ「天才」という部分に関しては異論はない。「手袋をしていると無意識に強く握ってしまうときがあるので、手袋をしていても、手袋をしていない感覚で打つようにしている」と“皮一枚”の感覚へのこだわりを聞いた時は「やっぱり天才なんだなあ」と思わされたものだった。

 そして監督就任時のいきさつも…。自分ではまだまだ現役でやれると思いながらも、周囲の期待に応えなくちゃと、現役引退を決断した。そういうところも由伸らしい。

 ただ、長嶋監督も監督1年目のシーズンは最下位だったし、原監督も最初は2年でクビになった。監督3年間の成績の2位、4位、3位はそれよりマシではないのか。

 近い将来、再び監督をやる機会は必ずある。あまり周囲の期待するイメージに合わせようとするのではなく、選手に熱いゲキを飛ばし、とにかく熱い野球を見せてほしいと思っている。