それでも苦悩は続く――。ソフトバンクは2日のロッテ戦(みずほペイペイ)に4―3で逆転サヨナラ勝ち。2点ビハインドの9回二死走者なしから最後は代打の川瀬晃内野手(27)が左中間を破る逆転サヨナラ打を放ち、連敗を「5」で止めた。

 劇的な幕切れだった。殊勲打を打った川瀬のもとには仲間が集まり、もみくちゃに。ヒーローの目元ににじんだ涙がそれまでの重苦しさを物語っていた。試合後の小久保裕紀監督(53)は「奇跡に近いですね。皆が救われた勝利だったんじゃないかと思います」とナインをたたえた。

 一方で勝利の裏には指揮官の〝葛藤〟もあった。小久保監督は「(代打で)いくなら川瀬しかいなかったんですけど、それか笹川の経験値を積ませるかの選択だった。やっぱり川瀬でいこうと」とも述べ、悩んだ末の一手だったことを明かした。

 主力の相次ぐ故障により、ファームから若手が緊急昇格するケースが続出しているホークス。この日「9番・中堅」で先発出場した笹川吉康外野手(22)も同様だ。昨年の日本シリーズにもスタメン出場した期待の長距離砲だが、今季は思うようなスタートを切れず二軍では打率2割前半と苦しんだ。それでも周東の登録抹消に伴い、一軍に昇格。ポテンシャルからチームでの期待値も高く、昇格後は先発起用されてきた。

 1点ビハインドの9回二死満塁。極限の場面で得られる経験値は計り知れない。しかし、この日は無安打で打率は0割9分1厘。勝利への確率が高いのは代打だった。主力の高齢化が進み、ケガが相次ぐ中で世代交代を進めなければならないという思い。もちろん最下位に沈む苦しいチーム状況で勝利も求めなければならず、育成と勝利の両立の難しさがあった。

 参謀役の奈良原ヘッドコーチは「育成のところで悩んだのはあるかもしれないけど、最終的に監督決断で川瀬でいくという決断をしたのが全て」と語った。指揮官は日々腐心しながら若手育成も進め、勝つ道を模索していく。