うらめしいはずの雨に名伯楽はなぜかウキウキだった。今季からソフトバンクに指導者復帰した倉野信次チーフ投手コーチ兼ヘッドコーディネーター(49)。宮崎春季キャンプは3年ぶりの帰還だった。

 2月序盤から相次ぐ雨天に悩まされたが、B組(二軍)練習が行われた最終日の29日も朝から雨が断続的に降り続いていた。「雨で始まり、雨で終わりましたね」。そう笑った倉野コーチだが、天気に恵まれなかったこの春は好都合だったという。

「晴れの日なら体が2つ欲しいんですよ、ほんとに。雨だとA組(一軍)とB組の分散練習なので両方見ることができる。だから、僕にとっては望むところでした」

 雨天日は午前に主力投手を中心に、午後は二軍と育成選手らをくまなくチェック。この1か月、練習場の移動は常に駆け足か早歩きで、広大な生目の杜運動公園を忙しく動き回るゆえに居場所が特定されにくかった。時にはコーチングスタッフの部屋で立ったままモグモグ。毎朝5時に起床し、宿舎に戻るのは選手バスの最終便が出る時間帯だった。

 チームの現状把握と一軍戦力の見極め、選手個々の育成方針の決定など携わる分野は多岐に渡る。古巣から「投手王国」再建の任務を託され、後ろ髪を引かれる思いでコーチ留学先の米国から戻った。MLB球団の契約打診を断っての帰国。「助けを求めてくれた、その事実が重かった」。メジャーに羽ばたいた千賀らを育成し、今回の復帰は指導者ながら「最大の補強」ともいわれる。

 晴れの日は「体が2つ欲しい」と嘆き、雨の日は「全員をチェックできる」と腕をぶした1か月が終わった。バイタリティーあふれる49歳。本人にそんなつもりは毛頭なかったが、選手よりも目立っていた。