巨人OBでヤンキースGM特別補佐の松井秀喜氏(49)が、14日で宮崎春季キャンプの臨時コーチを終えた。阿部慎之助監督(44)の要望に応える形で6年ぶりの古巣指導となったが、従来と異なったのはその熱血漢ぶりだ。そのため、何度もささやかれては実現に至っていない将来の監督候補として周囲が色めき立っている。

 これまで何度も投げかけられた質問に、変わらぬ〝ゴジラ節〟で応じた。臨時コーチの役割を果たし、巨人で今後指導する可能性を問われた松井氏は「私ですか? そうですね…。今度また慎之助監督がいつか呼んでくれると思うので、その時にまた来ます」とスルリとかわした。

 さらに「公式なコメントは?」と食い下がる報道陣に対し「公式なコメントはないですよ。私はもう今、OBとして応援する。今回は臨時コーチとしてお手伝いに来た。それ以上でも以下でもございません」と立て板に水。松井氏に指導を依頼した阿部監督は「本当に5日間みっちりずっと付きっきりで見ていただいて、すごく最高にいい時間でした」と感謝しきりだった。

 そんな中、今回の松井氏には明らかな「変化」が表れていた。指導を開始した10日には背番号55を〝継承〟した秋広を約45分間も熱血指導。二軍キャンプにも足を運ぶなど、5日間を全力で駆け抜けた。そのため、古参の球団スタッフも「6年前の臨時コーチの時は今回のような熱血指導はなかった」と言い切り「どちらかというと、当時の高橋(由伸)監督に気を使ってか遠慮していた。だいぶ指導者として火がついたのでは」と今後への期待に胸を膨らませた。

 ゴジラはなぜ前のめりになったのか…。松井氏をよく知るコーチの一人は「(松井氏は)もともと押し付ける指導は嫌いなタイプ。今回、選手の方から積極的に聞きに来てくれたので、それに応える形で自然と熱くなったそう。本当にいい空気をチームに運んでくれた」という。

 それでも、どんな経緯があろうとも周囲は放ってはおかない。この日、テレビの取材でキャンプ地を訪れた巨人OB会長の中畑清氏(70)はその熱心さに「OBとしては将来的に巨人で指導してくれることを期待しちゃうよね」と再びユニホームに袖を通すことを熱望した。

 求心力は絶大だ。「ファンサービス」(松井氏)としてランチ特打を行うと、昼食中のナインが続々とグラウンドへ。そしてついに待望の柵越えを右翼席に放つと、ナインから一斉に拍手が送られた。滞在は短期間ながらハートはガッチリとつかんでいる。

 さらに打撃練習終了後の円陣では松井氏が「大事なことはジャイアンツはチームとして勝つ。ユニホーム着ている以上、勝利目指してプレーしてください」とナインに「必勝」を厳命。すると、選手たちは目を輝かせて「ハイ!」と呼応した。

 もっとも、周囲のボルテージが上がっても「松井監督」誕生へのハードルは低くはない。そもそも松井氏は新任の阿部監督を応援する立場。生活拠点もニューヨークにあり、ヤンキースに籍を置いている身だ。

 浮かんでは消えるレジェンドの監督就任。実現するとしてもかなり先の話となりそうだが、松井氏が今回見せた〝やる気〟は創設90周年を迎えた伝統球団にとって大きな財産となりそうだ。