トゥーウェイ・プレーヤーの神話にも、時間は容赦なく針を進める。MLB公式サイトが7日(日本時間8日)に発表した最新の先発投手パワーランキングで、ドジャースの大谷翔平投手(31)が1位に浮上した。防御率0・97の快投は文句なしに映る一方、米国内では加齢とともに二刀流の持続性を問う声が強まっているのも現状だ。7月に32歳を迎える怪物が〝老い〟という、新たな難敵と向き合い始めている。
ランキングは、前回トップだったタイガースのタリク・スクバル投手(29)が左ヒジの遊離体除去手術で戦列を離れたことを受け、上位陣が大きく動いた。MLB公式サイトの投票パネルが1位に選んだのは大谷だった。今季は6試合に先発して2勝2敗、防御率0・97、37回、42奪三振、WHIP0・81。防御率はメジャートップで、相手打率1割6分、被OPS4割8分9厘と圧巻の数字を残している。
ただし、米国内の評価は単純な称賛一色ではない。争点は「投球の質」ではなく「量」と「持続性」だ。実際にSNS上でも、現地ファンの間から「現時点で最も投げている投手ではない」「投球回数が足りるのか」などといった辛辣なコメントも多数散見される。
さらに米スポーツ専門局「ESPN」電子版は4月27日(同28日)に掲載したドジャース特集で、敏腕記者として知られるジェフ・パッサン氏がナ・リーグの今季サイ・ヤング賞争いについて、大谷をポール・スキーンズ投手(23=パイレーツ)、チェイス・バーンズ(23=レッズ)に次ぐ3番手と見立てた。理由は明快だ。6人ローテーションで回る大谷は、5人制で投げる本格派先発ほど投球回を積みにくい。投手だけを評価する賞では、投球回という価値も報われるべきだという論理である。
その指摘は大谷への反発というより、二刀流の宿命に向けられている。ドジャースは5日(同6日)のアストロズ戦(ダイキンパーク)で前回登板した大谷を打席に立たせず、投手一本に専念させた。結果は7回4安打2失点、8奪三振の好投ながら、チームは1―2で敗戦。大谷登板日のドジャースは今季2勝4敗で、敗れた4試合の援護は計5点にとどまる。
「打者・大谷」を外せば、援護力が落ちるのは明白。そうかといって、毎登板で投打フル稼働を求めれば肉体への負荷は膨らむ。この矛盾こそ、今季の議論の根幹だ。
大谷自身の打撃面の停滞も、懐疑的な視線を強めている。6日(同7日)のアストロズ戦で2安打を放つまで、直近5試合で17打数無安打。7日(同8日)時点での今季打撃成績は129打数32安打、打率2割4分8厘、6本塁打、15打点、5盗塁、OPS8割3分1厘だ。同日時点でのランキングと照らし合わせれば、打者・大谷の「低迷ぶり」は顕著になる。
打率はメジャー89位タイ、本塁打は同42位タイ、OPSは同43位にとどまる。2021、23、24、25年にMVPを獲得し、23年にア・リーグ、24年にナ・リーグで本塁打王。25年も55本塁打でリーグ2位に入った男の基準から見れば、物足りなさは否めない。
米有力紙「ロサンゼルス・タイムズ」も4日(同5日)、ドジャースが大谷の負荷管理に動いている現状を詳報している。デーブ・ロバーツ監督(53)は打者休養の判断について、結果ではなく体の動きや様子を見たものと説明。今季6度目の先発で3度目の投手専念に至る背景となった。
大谷自身も打撃修正と健康維持の両立について、やり過ぎないこととのバランスが必要だと語っている。これは弱音ではない。23年9月に右ヒジ手術を受け、ドジャース移籍後初めて開幕から本格二刀流に戻った選手が、1年を走り切るために避けて通れない現実である。
元サイ・ヤング賞左腕で「FOXスポーツ」解説者のドントレル・ウィリス氏(44)は大谷の同賞獲得を支持しながらも、打撃については「以前のような走塁や三塁打は多く見られないだろう」との見方を示している。
パワーランキング1位への異論は、単なるバッシングではない。前例なき二刀流が30代に入り、加齢、蓄積疲労、手術歴とどう折り合うのか――。ユニコーン・大谷は「全力で全部やる」段階から「勝つために出力を配分する」局面へ入ったと言えそうだ。












