存在価値が再評価されている。ソフトバンクにFA移籍した山川穂高内野手(32)の人的補償で西武に加入した甲斐野央投手(27)が、6日から宮崎・南郷で春季キャンプをスタートさせた。

 甲斐野にとって古巣となるソフトバンクでは、この日から第2クールが始まった。その生目の杜運動公園には、右腕と切っても切り離せない人物がいた。2018年ドラフト1位入団時に担当だった宮田善久スカウト。同じ宮崎で12球団最後に始まった西武キャンプが、誰よりも気になっていたはずだ。「彼のことだから大丈夫ですよ。ライオンズでも重要な役割を担うはずです」。ベテランスカウトは寂しさを押し隠すように、優しくほほ笑んだ。

 最速160キロを誇る剛腕はルーキーイヤーの19年に65試合に登板し、侍ジャパンにも選出された。ただ、順風満帆のプロ人生とはいかず2年目に右ヒジを手術。昨季は46試合に投げて、防御率2・53と完全復活の兆しを見せた。6年目の今季は守護神・オスナにつなぐ「勝利の方程式」の一角として、フル回転が期待されていた矢先の移籍。先月11日、球団からの発表直前に宮田スカウトの電話が鳴った。

「(福岡から)静岡の自主トレに向かう新幹線からかけてきてくれて『ドラフト1位の活躍ができず、すみませんでした』と。あれだけ1年目に投げて、日本一に貢献してくれたのに。最後まで彼らしく、本当にいい男でした」

 普段から視野が広く、チームの負けが込むと重い雰囲気を払拭するべく、率先して〝バカになれる〟気配り屋だった。キャンプ中、ズボンの後ろの両ポケットはいつも拾ったゴミでパンパン。兵庫・東洋大姫路高時代の恩師である藤田明彦元監督の「どんな時もお天道さまは見ている」という教えを胸に刻み「徳を積もうとミエミエでも、街がきれいになって皆さんがいい気持ちになればいいじゃないですか」と、感性の豊かさが周囲に愛される理由だった。

 西武が見抜き、選ばれた甲斐野。昨年、近藤の人的補償として日本ハムへ移籍した田中正義と同様、〝29番目の絶対戦力〟が新天地で第一歩を踏み出した。