新生・巨人が「全権体制」と完全決別だ。プロ野球のドラフト会議が26日に行われ、巨人は日本ハムとの競合の末、1位指名で西舘勇陽投手(21=中大)の交渉権を獲得した。新任の阿部慎之助監督(44)はいきなり満点のスタートを切ったが、その背景では恩師であり、長年編成権も持つ全権監督としてトップに君臨した原辰徳前監督(65)からの〝独り立ち〟も果たしていた。

 青年監督が初仕事で大仕事をやってのけた。母校の後輩の当たりくじを確認した阿部監督がこぶしを突き上げた。「久しぶりにガッツポーズをしました」。壇上では競合した日本ハム・新庄監督が自分で引いたくじの中身を開こうとせず、阿部監督は「なんか(新庄監督が)動いてないなって。じゃあ早く(くじを見よう)って」と歓喜の瞬間を安堵の表情で振り返った。

 支配下5人のうち2位以下の4人が社会人という異例の「即戦力ドラフト」。水野雄仁スカウト部長は「優勝できていませんので(支配下は)即戦力」と狙いを説明した。

 チームにとって大満足となった今回のドラフトだが、5年間にわたって「全権監督」を務めた原前監督がタッチすることはなかったという。球団関係者は「退任されるまでは原前監督が編成会議に参加されてましたが、退任後は一度も出席されていません。自分が退くことで阿部新監督がチームづくりをしやすいようにしてくれたのでしょう」と証言する。

 指揮官として初めて迎えたドラフトで阿部監督は専門家であるスカウト陣の決定を尊重した。水野スカウト部長は「監督は俺には何も言ってこなかった。『水野さんが一番見ているから水野さんに一任する』と。本当に寝られなくていろいろ考えて、阿部監督も『分かりました』と言ってくれた」と明かす。

「全権監督体制」では原前監督の意向が強く反映されてきた。ある年にはスカウトが長い時間をかけて選んだ1位候補が、ドラフト本番の直前で引っくり返ったこともあったという。

 もちろん、その決定が奏功したドラフトもあったが、山口オーナーは「全権制度」の解体を決断。「新しい編成本部長(吉村禎章氏)が編成のトップになります。チームのほうを阿部新監督が率いるというような体制です」と明言したように一極集中していた権限の役割分担を明確化させた。さらに「オーナー付特別顧問」となった原前監督について、山口オーナーは「ジャイアンツの魂を今後に伝えていくという役割」とあくまでも〝名誉職〟とも位置づけていた。

 そうした大きな流れが全権体制から脱却した今回のドラフトにも大きく反映された格好だ。新体制では現場とフロントがそれぞれ自分の役職に対してベストを尽くす。1人に権限が集中することで決断から実行までのスピードアップが見込めるなどのメリットがある一方で、細かいところまで目が届かず機能不全に陥るリスクとも隣り合わせだった。

 2年連続Bクラスから4年ぶりのV奪回を目指す巨人が新たな道を歩み始めた。