名将はどこへ向かうのか――。今季限りでの辞任が正式決定した巨人・原辰徳監督(65)の次なるステップに早くも注目が集まっている。今季最終戦となった4日のDeNA戦(東京ドーム)で最後のタクトを振り、1―0で有終の美を飾った。17年間の監督生活にひとまずピリオドを打ったが、球団内からはさらなる“未踏の地”を目指してほしいとの声が上がっている。

 2年連続のBクラスに沈んだ責任を取り、V奪回の夢はまな弟子に託した。最終戦のセレモニーの最後に花束を手渡された指揮官の目は真っ赤だった。

「想像もしていなかった」。9度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた名将は、計り知れない重圧から解き放たれたかのように屈託のない笑みを浮かべた。勝てなかった悔しさはあるが、山口オーナーとも話し合い、阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチ(44)を次期監督とすることで一致した。

 今後は球団と「オーナー付特別顧問」として関わりながら、あくまでOBとして助言していく考えだ。“4度目”となる監督業については「いやいやいや」とさすがに笑顔で否定。勝負の世界だけに結果に左右されるが、もう監督としてやれることはやり切った。「一点の曇りもない」と未練もない。

 そんな原監督の新たな舞台へ、古参の球団関係者からはこんな声が上がっている。

「原さんにはユニホーム組として初のコミッショナーを目指してほしい。星野仙一さんが候補だったが、2018年1月に70歳で亡くなってしまった。今では原さん以外、適任者はいない」

 これまでにも原監督は支配下70人枠の撤廃、セ・リーグへのDH制の導入、FA移籍に伴う人的補償の撤廃などを声高に訴えてきた。現役監督のルール改正には眉をひそめる球界関係者も少なくなかった。ただ、それらは決して巨人の球団だけの“利益”をもくろむものではなく野球人口の拡大や球界全体の発展を見据え、考え抜いた末の提言だった。

 また、現役時代には選手会会長としてFA制度導入に尽力。編成権を持つ全権監督としてフロントも経験しており、NPBトップの資質は十分に兼ね備えているとも言える。

 これまでは中日や阪神、楽天で指揮を執った星野氏が候補として最も近い立場だった。周囲も期待していたが実現しなかった。

 その星野氏と原監督は深い縁でも結ばれている。原監督が第1次政権で退任(03年)する際、阪神の監督だった星野氏が甲子園でセレモニーを敢行。花束を渡し「必ず戻ってこい」と励ました。その言葉を胸に、原監督は再びユニホームに袖を通して2次政権では10年間の長期政権を築いた。

 コミッショナーはその恩師の“遺志”を継ぐことにもつながる。巨人ナインの一人も「自分たちがふがいないせいで、原監督が退任することになってしまった。本当に申し訳ない。新しい目標がもしできたなら、それに向かっていってほしい」と言葉を向けた。

 もちろん長年の戦いで心身は疲弊しているに違いない。「今回は1年くらいは飽きないと思いますよ」と原監督は笑いを誘った。何かのキッカケで指揮官の心に再び火がつけば、ユニホーム組から初のコミッショナーが誕生する可能性もありそうだ。