【森脇浩司 出逢いに感謝(11)】2013年の開幕は右ヒジのケガで実戦登板のない金子千尋を開幕投手にいかせ、8回を6安打1失点の好投を見せた。体調に問題がなく、ボールが「7割」でも金子の7割なら勝算ありと考え、さらに大きな投手になるために一歩踏み出す必要があると思いました。
競馬だって優秀な馬が休み明けに出走するとなったら人気になるけど、実はたたき台にして次のレースを見据えているのかもしれないし、7割の仕上がりでもこのメンバーなら負けるはずがないというレースもある。あの時の金子は7割でも「GO」だったということです。これからもこういうケースはある。13年、14年に関しては今まで以上に強さを持って臨んでくれたと思う。
強くなっていくと避けられないものがある。勝っていけばCSが待っているし、そこを勝ち上がらないと日本シリーズにいけない。100%に持っていく自分なりの方法は大事だけど、なかなかそうもいかない。場面場面で引き出しを増やしていくこと。これがトップアスリートとして高いアベレージをキープする必須条件ですね。金子を含めて当時のオリックスの選手に強く伝えたかったことですね。
性格的にはクールでナイーブで、優男みたいな印象を世間は持っていたと思いますが、表情に出すか出さないかは別にして、投げてる姿、ベンチに帰ってきた姿を見ていると喜怒哀楽をしっかり持っている選手と思っていました。ポーカーフェースの投手が打たれて表情を変えずにベンチに引き揚げるといっても、打たれた直後って一瞬「ウッ」となるんです。人間観察じゃないけど、僕はそういう素の部分を見るようにしていましたね。心理学的にいうと、アドバイスするタイミングもプレー直後の10秒から12秒の間が一番いいといいますもんね。
金子は13年が15勝8敗で防御率2・01。14年が16勝5敗、防御率1・98でMVP、沢村賞とタイトルを独占し、球界のエースとなりました。FA権を取得し、オフにはメジャーを含めて争奪戦とマスコミの注目を集めた。世間の評価が上がれば新たな目標ができるのは当然の流れだし、その中にメジャーが出てくるのも当然。他球団からいい条件で評価されることも僕が願っていたことでもありました。
あれだけの選手なんで監督としてはオリックスの中心、球界の中心選手になってほしいと願うし、選手の価値が高まるのは喜ばしいし、うれしいこと。1つずつ階段を上がっていった結果がそこにあり、見えていなかったものが見える。監督であったとしても誰がその人の人生のことを決めることができるのかって思うでしょ。だから後押しもしないし、行く時には真心を込めて送り出したいと思っていましたよ。
オリックス監督時代は獲得したい選手がいました。彼こそが今後のチームに必要な存在と思っていました。












