全日本プロレスの四天王時代を支えた名実況者といえば、元日本テレビアナウンサーの福澤朗氏(59)だ。1989~97年に「全日本プロレス中継」の実況を担当。「ジャストミ~ト!」は、お茶の間にプロレスを広めるきっかけになった。その福澤氏がこのたび、“デンジャラスK”川田利明(59)が営む飲食店「麺ジャラスK」(東京・世田谷区)を訪問。ラーメンに舌鼓を打ちながら故ジャイアント馬場さん(享年61)、故ジャンボ鶴田さん(享年49)との思い出を振り返る――。

 ――川田と再会して

 福澤氏(以下福澤)多分25、26年ぶりにお会いして。お店をやられていることは知っていましたが、お元気にやられていてうれしかったです。体格的には110キロ前後あったわけですから、随分とやせられて普通のいいおじさん。でもちょっと毒づくところは昔と変わらないいいところですね。

 ――プロレスの初仕事は1989年4月18日。鶴田さんが初代3冠ヘビー級王者になった大田区大会だ

 福澤 会場に着いて、まずはジャイアント馬場さんにあいさつにうかがうと、赤いジャージーを上下に着てらっしゃって。葉巻の甘い香りが客入れ前の体育館中に充満してるんですよ。でも馬場さんが葉巻を吸っているその上に大きく「禁煙」の文字があって。それを見て「ジャイアント馬場さんは超越した存在。治外法権の人間なんだな」っていうことを知りました。そこでごあいさつすると「よろしく」ってひと言だけかけてくださったんです。その後、ジャンボ鶴田さんにあいさつすると「そうか! 頑張れよ!」って背中をバーンって叩かれて、数秒呼吸ができなくなりました。死ぬかと思うような厳しい愛情をいただきましたね。

 ――当時の全日本を実況して感じたことは

 福澤 90年代の全日本はすさまじいっていうか、えげつない。試合開始のゴングが鳴った瞬間からクライマックスだから、実況する側もグーッと血圧が上がっていろんな言葉の引き出しが開いてくるんですよ。そのリング内のすさまじさにこちら側は絶対負けたくないので、どんどんテンションが上がっていく。そんなせめぎ合いをしていましたね。

 ――90年に天龍源一郎が全日本からSWSに移籍した時の状況は

 福澤 団体内部についてはわからないですが、日本テレビおよびプロレス担当はみんな「これでもうダメかもしれないな」っていう雰囲気になってました。

 ――その後、2代目タイガーマスクがマスクを脱ぎ三沢光晴になった

 福澤 実況は若林(健治)さんだったので、僕は急きょ「リングから去って花道を歩いていく三沢にマイクを向けろ」と指示されて。質問しても、もちろん三沢さんは無言。でもそれが我々の想像力をかき立ててくれて、結果的に雄弁な表情だった。だからそれ以降、テレビは決して言葉で潰すメディアじゃないと学んだんです。特に川田さん、三沢さんはお客さんにアピールするんじゃなくて、ちょっとした眉毛の動きとか表情で、僕らのイマジネーションをかき立ててくれる。なので僕たちはこういう意味なんだろうと思って「プロレスニュース」で勝手に吹き替えたんです。あれほんと失礼千万なコーナーですよね(笑い)。

 ――「プロレスニュース」は一世を風靡した

 福澤 テレビは「ざらつき」が必要なんです。見てる人にちょっとした違和感を抱かせるのが、テレビのつくり方の基本。そのざらつきをプロレスニュースでつくろうって。当時見ている方からは批判のほうが圧倒的に多かったです。でもやがて「プロレスニュースが楽しいです」って言ってくださる、特に若い方が増えていきました。リングの中は圧倒的な迫力だから、箸休め的なのがよかったんでしょうね。

 ――1月27日に小橋建太と開催した前回のトークライブを振り返って

 福澤 フリートークの中で盛り上がったのは、外国人レスラーのとんだ一杯食わせ者系。僕らがイチ押しだったのは「イイやつ、ジョー・ディートン」。馬場さんが足を上げると、その足に吸い込まれるように自分からぶつかっていくイイ人の極みです。彼は「私はこの方からお金もらってるんだから、ぶつかりにいくのは当然だろう」っていうイイやつで。スタン・ハンセンとかじゃない、中堅どころのにぎやかしで来てたような外国人レスラーにもスポットを当てたのが盛り上がりました。

 ――8月20日のイベントは川田、小橋、若林氏と開催する

 福澤 今回も4人のフリートークの中で何か新しいネタが生まれて、それがきっと第3回につながる気がしますね。今回声出しも重低音のストンピング攻撃もオッケーなので。30年前によくやっていた人が今やると足やハムストリングスあたりがつる場合があるので、練習してきていただいて。ぜひこのイベントで激熱な夏を一緒につくりませんか?

 ☆…福澤氏と“鉄人”小橋建太が日本テレビに残る秘蔵映像とともにプロレスの名シーンを振り返るイベント「爆音! 日テレプロレス超名画座2」は、20日に東京・渋谷の「CBGKシブゲキ!」で開催。1月に大好評を収めたイベントに今回は川田と若林アナが加わり、豪華共演が実現する。当時の裏話が聞けるプロレスファン必見のイベントになりそうだ。

 ☆ふくざわ・あきら 1963年9月14日生まれ。東京都出身。早大卒業後の88年に日本テレビ入社。アナウンサーとして「全日本プロレス中継」や「ズームイン!!朝!」など数々のヒット番組に出演。2005年7月にフリーアナウンサーに。