2024年パリ五輪の開幕まで26日で1年となった。日本中が歓喜した21年東京五輪のようなメダルラッシュに期待が高まる中、花の都で行われる祭典に向けて、注目選手を直撃。フェンシング女子サーブルで22年世界選手権覇者の江村美咲(24=立飛ホールディングス)が、金メダルへの思いなどを激白した。ライバルたちの徹底マークにあいながら、堂々と戦い続けるヒロイン候補の胸中とは――。
「1年後の自分にメッセージを――」。記者の依頼に江村は熟考し、達筆な字でこう記した。「全力勝負を楽しんで金メダル!」。21年東京五輪は個人戦で3回戦敗退に終わるも、団体では過去最高となる5位入賞。当時の自分が持てる力をすべて出し切った。だからこそ、24年パリ五輪は「後悔のない戦い」を目標に掲げている。
江村 とにかく怖いし不安もあるし、東京五輪が終わってからの3年間のすべてが1回の試合で決まるので、苦しいだろうし、逃げたくなると思うけど、その自分とも目の前の相手とも全力勝負をしたい。お互いが120%本気で勝ちにいくような全力の戦いを楽しんで、後悔なく納得して、それが全部できた後に首に金メダルがかかっていたら一番いいなと思います。
22年世界選手権は、個人戦で日本女子勢初の金メダルを獲得。一躍パリ五輪のヒロイン候補に名乗りを上げた。一方で、絶対的な自信があるかと言えばウソになる。「(金メダルを)取らなかったら(色紙は)捨ててください(笑い)」。勝負の世界の厳しさを知るがゆえの言葉。そして世界の頂点を知ったことで、新たな壁に直面している。
江村 ここ最近は結構不調です。高いところを目指しているうちに、いろいろ考えすぎるようになっちゃっていたのかな…。今はもうちょっとシンプルにやろうと思っています。例えば戦う上での自分のルールというか、軸を持っていたのですが、その軸っていうのがちょっと通用しなくなってきた時に「信じ続けていいのか」「変えるとしたらどこを変えればいいのか」と迷いが生じてしまった。プレーがブレブレになっているので、今は原点に返ろうとしている時期です。
現在の世界ランキングは1位。徹底的に研究されたことで苦戦を強いられる場面も増えたが、江村はパリ五輪で金メダルを手にするための〝試練〟として決して悲観的にはとらえていない。
江村 まずは、やることを一択に絞っています。本当に基礎の基礎ですかね。今はレベルとしては一歩下がるという感じにはなるのですが、与えられた(ピストの縦幅)14メートルをいっぱいいっぱいに使い切ることを意識しています。パリ五輪までこういう(苦しむ)時期がなく、ずっと順調にいけば、それに越したことはない。けど、ぶつかってしまったからには、必ずぶつかる前の自分よりも強くなって戻って来ることが必要なことだと信じています。
自らに足りないものを考え、試行錯誤を繰り返す日々。自分自身へのプレッシャーとも戦いながらも〝楽しむ〟という気持ちを重視してメンタルを安定させている。
江村 東京五輪の前後までは「生きるか死ぬか」くらいの必死さだったので、最初は「楽しめ」と言われても、あんまりピンとこなかったんです。でも、今は楽しむことによるいろんなメリットを感じています。視野が広くなったりとか、プレーのバリエーションや引き出しが増えたり、試合中に浮かんでくるアイデアが増えたり、集中力が高まりました。自分のミスに対しても冷静にいられるようになりましたし、いっぱい、いいことがあると思います。
数々の壁を乗り越えた先にこそ、金メダルという栄光がある。1年後の自分に「よく信じたねと言いたいです」とメッセージを送った江村。表彰台のテッペンに立つ自分をイメージし、大一番への準備を進める覚悟だ。
【アクセサリーにこだわり】おしゃれでモチベーションを高める江村のアクセサリーには、こだわりが詰まっている。耳にはスポンサーの「Eureka」から提供されたラボグロウンダイヤモンドのピアスを着用。「自分で何個かある中から選ばせてもらいました」と明かす。指には複数の指輪をつけており、そのうちの一つは世界選手権優勝時に両親からプレゼントされたものだ。「裏に『World Championships 2022』と書かれています。見た目もそうですが、記念的な面もあるので、どんどん指輪が増えてしまいました」と笑顔で語ってくれた。
☆えむら・みさき 1998年11月20日生まれ。大分県出身。小学3年でフルーレを始め、中学入学前にアニメ作品「ウサビッチ」のジグソーパズルの景品目当てで出場したサーブル大会で優勝し、種目の転向を決断。中大卒業後の2021年4月からはプロ選手として活動。同年東京五輪は団体で5位入賞に貢献。22年世界選手権では個人で日本勢初の金メダル、団体でも銅メダルを手にした。父・宏二氏は88年ソウル五輪フルーレ代表、母・孝枝氏もエペ代表で世界選手権代表に選出された経験を持つ。170センチ。
















