【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】昨季オフに行われた現役ドラフトで、阪神に新加入した大竹耕太郎投手(27)がチームトップの6勝(1敗)と活躍をみせている。

 前回登板となった17日のソフトバンク戦(甲子園)は、古巣を相手に4回二死まで完全投球。5回に失策がからんで1点を奪われたが、6回4安打1失点(自責0)の好投で、7勝目の権利を手にしてマウンドを降りた。1点リードの9回二死から岩崎が逆転打を許し、7勝目はならなかったが、防御率はリーグトップの1・13。虎の首位快走の原動力となっている。

 登板予定日に雨が多く「大雨降太郎」とネット上でイジられることも多々…。日に日に「阪神・大竹耕太郎」の認知度もアップしていることは間違いない。

 そんな大竹は熊本県屈指の進学校、済々黌高出身。そこから早大に進学し、2017年ドラフトでは育成4位でソフトバンクに入団した。指名順位が示す通り、即戦力と見込まれたわけではないことは理解できる。だが、ある指導者との出会いで野球人生は激変した。

 17年オフ、阪神を退団しソフトバンクに加入していたのは久保康生二軍投手コーチ(現巨人巡回投手コーチ)だった。当時の久保コーチは、プロ入り後の大竹の様子を慎重に観察していた。そして、タイミングを見計らってこんな言葉を掛けた。

「今のままではプロではちょっと厳しいな。周りを見渡して分かるやろ。自分がシンガリ(順列として最後尾)やなって」

 危機感をあおったわけではない。その後に続けた言葉で大竹の心を揺さぶった。

「でも、君はキャッチボールが一番いい。だから絶対に何とかなる。そのキャッチボールをいかにピッチングにつなげていくか。一緒にやってみるか」

 自然の摂理に従った力の伝達。久保メソッドを徹底的に叩き込まれた。投球時、軸足の左ヒザが折れる悪癖を矯正。腰の回転軸を投球プレーンに対して縦振りになるよう修正を加え、高い位置から重力を利用し、ボールに角度を付けてリリースする投球スタイルを確立した。

 練習はうそをつかなかった。ウエスタン・リーグで22試合に登板し8勝無敗、防御率1・87で7月29日から支配下登録。投手陣に疲れが出る夏場に一軍参戦し、11試合登板(先発8)で3勝2敗、防御率3・88と活躍した。CS、日本シリーズも経験し、日本一の一員となった。

 時を経て、今季から阪神の一員となった。ソフトバンクでは実力はあるものの〝余剰戦力〟という立場だった。だが、阪神には必要とされて移籍してきた。

 前岡田政権で投手コーチを務めた久保投手コーチの古巣での活躍というのも不思議なご縁。大竹が今季、虎投にどんなシナジーをもたらすのかを今後も見守りたい。