【グラゼニ球論・金村暁】4日のロッテ戦(甲子園)で9回3安打、12奪三振で完封勝利を飾った阪神・才木浩人(24)は文句なしのベストピッチでした。

 5月21日に再昇格してから3試合目の先発マウンド。28日の巨人戦で自己最長の7回2/3、122球を投げた前回に続き、今回も別の形で、先発としての成長の跡を示しました。持ち味である最速153キロの直球が軸であることは不変も、この日は立ち上がりから長いイニングを投げることを見据えた配球面での工夫を感じました。

 立ち上がりから2回まで、4番・ポランコに投じた1球を除いては、全球が直球。1メートル89センチの長身から打者の手元でホップする力強い真っすぐで「力で押す」印象を相手打線に先に与えた後、3回以降は、徐々に変化球を織り交ぜていくことで、中盤はより相手打者に的を絞らせませんでした。

 女房役・梅野の好リードも光りました。130キロ台後半のスライダー、フォークなどタイミングを外す球種をこの日はあえて3回の1順目の下位打線、8番・佐藤から解禁。2巡目にむけ、直球に照準を合わせてくるであろう相手打線の心理を「あるよ」と先読みする形で、その佐藤をカーブ、二死から1番・友杉をフォークで打ち取り、直球に的を絞らせないための〝布石〟を打ちました。これが続く4回以降の中盤、2巡目を迎える敵打線とのかけ引きにおいて、常にバッテリーが優位に運んだ下地となりました。

 さらに、この日は先発として、ひと皮むけるためのハードルを自力で越えたことも見逃せません。9回を完封・完投する投手には、最低でも1、2回は、越えるべき〝山〟があります。この日で言えば1点先制直後の7回の先頭打者・岡を四球で歩かせた直後や、2点リードの最終回は、二死二、三塁の一打同点の大ピンチの場面。ここを乗り切り、1人で試合を投げ切った成功体験は、今後の成長を大きく加速させるものになるはずです。

 この日は9連戦の2戦目。前日の延長戦で6人をつぎ込んでいたブルペンを休ませ、球界を代表する投手・佐々木朗との投手戦を制しました。この日の快投はチームにとっても、才木にとっても大きな意味合いを持つ価値ある1勝。近い将来、エースになるために上らなくてはならないいくつもの階段を、この日の才木は一足飛びで越えていったように感じました。

(本紙評論家)