【取材の裏側 現場ノート】これが「高橋大輔」というスケーターの人柄か――。取材者として接するようになってからも、テレビ越しで見たイメージは全く変わらなかった。

 フィギュアスケート担当として〝かなだい〟を取材するようになって約1年半。2日に行われたアイスダンスの村元哉中(30)、高橋大輔(37=ともに関大KFSC)組の引退会見の取材に足を運んだ。約1時間の会見では高橋、村元がともに「やり切った」とすがすがしい表情を浮かべた一方で、私は2人のさりげない気遣いが印象に残った。

 通常の引退会見では、記者やカメラマンの前に用意された壇上で選手が座って話すケースが大半だ。しかし、今回は2人が「フランクにいつも通りにやりたい」と希望し、囲み取材形式で実施。2人は立ちながら取材に応じ、質問した記者の方を向きながら話していた。

 さらに取材後のフォトセッション(写真撮影)ではカメラマンから「ポーズお願いします」と声をかけられると、全力で対応。スーツで革靴姿にもかかわらず、演技時さながらの決めポーズを披露。ある記者は「長い間かかとをあげていたのがすごい。さすがですね」と声を漏らしていた。

カメラマンのポーズ要求に応える村元哉中(左)と高橋大輔
カメラマンのポーズ要求に応える村元哉中(左)と高橋大輔

 まさに〝スター〟の振る舞い。そんなとき、ふとフィギュア関係者の言葉が頭に浮かんだ。「世界の舞台で活躍するアスリートって個性的だからこそ、結果を残すことができると思う。でも、高橋選手は万人受けするいい人なんですよね。〝俺は五輪のメダリストだから〟っていうおごりは全く感じません」

 この話を聞いた瞬間は、正直「そうなのか」と深く考えることはなかった。だが〝かなだい〟の取材をすればするほど言葉の意味が分かった気がする。「誰にでも気遣いができる」。この日の引退会見を通じ、改めて実感した。

 引退会見が終わり、フィギュア関係者と話をしていたところ、たまたま高橋と村元の帰り道に遭遇した。2人とも立ち止まり、フィギュア関係者たちと談笑。嫌な顔一つせず、話していた姿はまさに素の2人だったと思う。

 誰からも愛されるのが「高橋大輔」というスケーター。村元とのカップルでどんな世界を切り開いてくれるのか。今後は新たな楽しみを持って、取材活動に取り組んでいきたい。

(五輪担当・中西崇太)