プロ野球の現役・OB選手らによるユーチューブチャンネル開設が急速に進んでいる。50万人を超えるチャンネル登録者数を持つユーチューバーが複数誕生するなど、多くの視聴者の支持を得ているが、その一方ではさまざまなSNSを通じた誹謗中傷も問題となっている。今後はどうなるのか。自称「プロ野球OBユーチューバー第1号」愛甲猛氏(60)に聞いた。
――現在のプロ野球ユーチューブ事情について
愛甲 今はゲストを招いてトークをするという形式が定着しているが、これからは淘汰されていくと思うよ。特に制作会社に所属しているユーチューバーはみんな同じスタンスでやっているけど、ゲストもかぶって飽きられるし。
――現役の選手でも自身のチャンネルを運営している人もいる
愛甲 決められた登板間隔がある先発投手はともかく、シーズンに入ると基本そんなことをやっている時間はないかな。これもOBと同じくプロダクションにいる選手の場合は編集などを任せてできるかもしれないけど。あと日本の場合は成績が悪いとすぐに誹謗中傷されるというのもある。
――愛甲さん自身の誹謗中傷対策は
愛甲 自分はコメントは見ないし、あまり気にしないかな。そもそもなんとかしてアラを見つけてやろうというような、趣味で誹謗中傷をしている人もいるでしょ。そういうのを相手にしていたらやっていけなくなるよ。(自分の動画を)見てくれているというわけではあるし。
――ユーチューブはいつごろ始めたのか
愛甲 当時の所属事務所の関係でなかなか動画投稿ができなかったけど、そもそも自分はプロ野球OBの中でもチャンネル開設が一番早かったんだ。他の人とは違うスタンスでやるということは意識しているよ。
――他の人と違うスタンスとは
愛甲 現状は丁寧にやっているOBが多いでしょ。あれは(監督やコーチなどで)現場に戻れるかもしれないという思いがあるから。その証拠に派手な球界批判をする人はいないよね。野球界は狭い世界なだけに敏感というのもあるよ。自分や江本(孟紀)さんのような人間は好き勝手やらせてもらっているけど(笑い)。
――気になるユーチューバーは
愛甲 やっぱり落合(博満)さんかな。なんといっても面白い。落合さんにしても江本さんにしても引き出しが多いから、聞き手のゲスト次第でもっと面白くなるのに。オレ? 落合さんから引き出す自信はありますよ(ニヤリ)。
――落合さんや江本さんの特徴とは
愛甲 今の試合の解説なんかにも言えるけど、基本的に結果論が多いよね。起きたことに対してしゃべるというのが基本。だけど落合さんや江本さんはこれから何が起きるかという部分を重視して、予想するというスタンス。これは他の解説者やユーチューバーにはマネできない大きな強みだな。
――技術面を伝えるOBもいる
愛甲 そこに関しては古田(敦也)でしょ。あれはすごい。だけど内容が難しいから、自分たちプロには分かるけどアマチュアの人には向いてないかな。
――アマチュア選手に対しておすすめしたいユーチューバーは
愛甲 元中日の吉見(一起)はおすすめだね。アマにもプロにも分かりやすい。それでも、基本的にはあんまりいないかなあ…。そもそもプロ野球選手に対して指導してくるアマチュアのユーチューバーなんてのもいるけど、動画を見てみるとやっぱり60、70点くらいのレベルの指導が多い。考え方や捉え方にも差があるよね。ただそういう人も理論は持っているから、言葉にして伝えるのはうまい。プロはどうしても自分の感覚でやってきた選手が多いから、そこは課題かな。
――プロ側の指導動画の課題は“言葉”
愛甲 野球に関する動画はたくさん見るけど、その中でもアマチュアの方の指導動画を見ると、とにかく言葉が巧み。そういう意味では頭に入りやすいという部分はあるかな。ただやっぱりアマチュアの中でのみ通用するという教え方をしているなとは思うよ。
――愛甲さんといえば暴露系、ぶっちゃけというイメージもあるが、気をつけていることは
愛甲 そもそも自分はガーシー(東谷義和)みたいに踏み込んじゃいけないところにはいかないよ。ああいうふうに敵をつくってしまうとよくないよね。ユーチューブに限らず、SNSはそこの線引きをしっかりやらないとひどいことになっちゃうよ。
――線引きをちゃんとできないとスシロー事件のようないわゆる炎上につながってしまう
愛甲 あれは論外でしょう。承認欲求を100%満たそうとするとあんなことが起きちゃうのかな。人に認められたいという考えだけでSNSはやったらダメだね。自分はそこの分別はつけているから問題ないけど。
――自身の今後のユーチューブの方向性は
愛甲 やっぱりプロだったからこそアマチュアの人に分かりやすい技術的な動画を作りたいよね。とはいっても自分1人だけでは限界があるから、もっといろいろなことを勉強しつつ、多くの人と協力しながらやれればいいかな。ゲストを招いてのトークもいいけど、自分だけでなく多くのプロ野球OBが自分の言葉で理論を伝えていってほしいよ。













