金言か、それとも――。WBC日本代表が14年ぶりの世界一に輝いた。野球ファンの興奮は依然として冷めやらぬ中、代表選手たちは続々と所属球団へと復帰し、シーズン開幕に向けて着々と最終調整を行っている。今後、侍たちには大舞台で得た貴重な経験をチームに還元していくことが求められるが、現場サイドからは〝余波〟を懸念する声も出ている。
若き侍たちにとっては何物にも代えがたい経験を得たはずだ。今大会の日本代表は平均年齢27・3歳と史上最も若いチーム。その中で、他球団の先輩選手だけでなく、大谷(エンゼルス)やダルビッシュ(パドレス)ら経験豊富なメジャー組と接する機会はまたとないもので、大会期間中には若手が積極的に質問しに行く場面も見られた。
在籍球団に帰還後は貴重な情報をチームに還元することが求められるが、その中であるNPB現職コーチからは、こんな声も漏れていた。
「代表に選ばれた子たちは、普段聞くことができない他球団の選手から様々な有益な情報を聞いて帰ってくる。それをチームに還元することは喜ばしいことだけど、その情報の取り扱いには気をつけてほしいよね」
メリットしかないようにも思えるトップ選手たちからの「金言」だが、なぜ取り扱いに注意する必要があるのか。
「代表選手が聞いてきた高度な情報はその後輩選手たちへ、そしてさらに下の後輩たちへと広がっていく。そのあとはみんな『マネしてみます』と一斉に取り入れ始めると思う。だけど、まだ基礎ができていないようなファームレベルの若手選手がフォームやトレーニングなどをマネしても頭でっかちになるだけ。『まずは基礎をやりなさいよ』と私は思うけどね」
とはいえ、指導者側も頭ごなしに「モノマネ禁止令」を出しているわけではない。「情報先行」なスタイルにならないよう、理論を理解した上で継続していくことが求められるという。
「全然マネしていいのよ。みんな一生懸命やってるから、こちらも頭ごなしに『ダメだよ』とは言えないからさ。とりあえずやってみないと。一番ダメなことは、例えばフォームにしても、すぐにあきらめて変えてしまうこと。半年くらいしっかりやってダメなら分からないかもしれないけど、1日2日だけコロコロ変えて自分に合う本当のフォームが分かるわけないのよ。教えるわれわれの立場からしてもそんな簡単に変えられたら困っちゃうよね」
短絡的な思考でトップ選手のモノマネをするのではなく、自らの立場と情報の理論を理解した上で実践に移す――。選手個々の取り組む姿勢が試される日々となりそうだ。










