第95回記念選抜高校野球大会に出場する鳥取城北OBの川野翔(28)は〝野球芸人〟の道を歩んでいる。2012年の甲子園に主砲として春夏連続出場。大学卒業後に上京し、吉本に所属して漫才と野球モノマネ、野球部あるあるが好評だ。ともに甲子園の土を踏んだ〝大谷世代〟のプライドを胸に「お笑いメジャーリーガー」を目指す。
【気になるあの人を追跡調査!野球探偵の備忘録・後編】2012年、鳥取城北はセンバツに出場し、初戦で三重に5―6で敗れた。4番の川野は5打数無安打の3三振。1点差に迫った9回二死一、二塁で打席に立ったが、バットは空を切った。鳥取に帰っても涙が止まらず、夏への切り替えもできない。ネット掲示板で「お前のせいで負けた」「鳥取まで歩いて帰れ」と叩かれ、打撃の感覚をまったく見失ってしまう。
そんなドン底から救ってくれたのが、お笑い番組「エンタの神様」(日本テレビ)だった。
「毎晩泣いて、死にたいとまで思ってて…。そんな自分がエンタを見て笑っていた。芸人さんってすごい。笑うことができなかった人を笑わせられる。そこから志そうと思いました。あの三振がなかったら芸人になっていなかったかもしれません」
自分と似たぽっちゃり体形のプロ選手のモノマネでチームメートを笑わせるのが得意だった。大ファンだった中田翔、中村紀洋、中村剛也、筒香嘉智、浅村栄斗、ラミレス、カブレラなどチームメートも含め、レパートリーは200人以上。テレビのセンバツ番組に取り上げられたこともあった。お笑いに救われ、夏に再び聖地に帰還して1勝を挙げた。
大阪学院大を経て上京。吉本に所属し、芸歴3年目を迎えた。お笑いコンビ「コンバート」「オリジン」で漫才をしながらユーチューブ「川野翔の野球ちゃんねる」で野球部あるある、大好評のモノマネのショート動画などを次々とアップ。かみじょうたけし、いけだてつや、山崎弘也ら高校野球芸人枠にも「食い込んでいきたい。知識は僕より詳しいと思うけど、それを超える実体験がある」と虎視眈々だ。
まだ舞台も少なく、アルバイト生活が続くが、励みになる存在もいる。2012年のセンバツ開会式で花巻東・大谷翔平(エンゼルス)と大阪桐蔭・藤浪晋太郎(アスレチックス)とともに行進。遠目で見ただけだったが「背は高いのに顔は小さい。対戦したかったですね。大谷選手は僕と誕生日が4日しか違わないのに何でこんなに差が…と思うこともあるけど、同じ舞台に立てたのは誇りですし、同世代はずっと応援したい。僕はお笑いでメジャーリーガーになりたい」と先を見据える。勝負はこれからだ。
☆かわの・しょう 1994年7月9日生まれ。兵庫県出身。伊丹ボーイズを経て鳥取城北に入学。長距離砲として2011年に神宮大会でベスト4、12年には選抜大会、夏大会と2度の甲子園出場を果たした。大阪学院大学でも野球を続けるが、公式戦出場はなし。卒業後に芸人を目指して上京し、漫才コンビ「コンバート」「オリジン」を経て現在は新しい相方を探している。SNSに積極的に野球ネタを発信。村上宗隆の打撃モノマネが人気となり、「偽村神様」とABEMAで取り上げられた。













