【気になるあの人を追跡調査!野球探偵の備忘録】高校野球の応援風景で今や欠かせないものとなっているのが、ブラスバンドによる野球応援だ。なかでも全国的な知名度を誇っているのが、習志野高校(千葉)吹奏楽部。侍ジャパンU18壮行試合や、プロ野球ロッテの公式戦にも招かれ「美爆音」を披露するなど、高校の部活動の枠に収まらない活躍をしている。どんな秘密があるのか。180人を超える部員を指導する顧問の一人、海老澤博氏(44)に聞いた。
習志野高校吹奏楽部のすごさは野球応援だけにとどまらない。今年も全日本吹奏楽コンクールとマーチング全国大会で2年連続ダブル金賞を受賞。全国にその名を轟かせている。
その一方、11月3日に東京ドームで行われた「高校野球女子選抜対イチロー選抜KOBE CHIBEN」でも、外野席から応援演奏を披露。これはイチロー氏の事務所および全日本女子野球連盟からのオファーによるもので、海老澤氏は「試合前にイチローさんがライトスタンドまであいさつに来てくださり、言葉を選びながら生徒に語りかけてくれました。生徒は感動して固まっていました」という。
さらには「試合終了後、バックスクリーンに映ったインタビューを受けるイチローさんを食い入るように眺め『うまくなるためにはうまい選手のまねをする』や『(この試合が)特に高校3年生の目標となってもらえるような取り組みをしたい』という言葉に大きくうなずいていました」。パッと目を引くオーラをまとったイチロー氏と別に、松坂大輔氏は「優しいお兄さんといった感じだった」そう。「僕なんかは松坂世代。内心うれしさでいっぱいでした」と喜びを明かした。
今夏はこんな話題も議論された。ブラスバンドによる応援が再開された夏の甲子園大会では、SNS上で「なんで野球部の応援のために吹奏楽部が演奏するの?」というツイートが波紋を呼んだ。こうした意見に対し、海老澤氏は「いろんな考えがありますから」とした上でこう語る。
「人によっては(野球応援の際に大きな音を出して演奏すると)『口が壊れる』とか『音が汚くなるから』と言う方もいます。確かにそれは違うとは言い切れない。でも人に音楽を伝えるというのは〝想い〟の部分がいっぱいあるので。そういう経験とかきっかけを、いかに生徒に与えるかは大きなこと。今年、やっと野球応援が解禁されて、3年生でも初めてだった。当然コンクールではなく、そこ(野球応援)を目指してやってきた子もいるわけで。人のために応援するとか、自分の力で背中を押してあげたいという気持ちだとか。そこを感じさせてあげられるのは、普通ではなかなかない経験なのかなって思います」
音楽で「頑張れ」という〝想い〟を届ける。それは確かに、スポーツ応援だからこそ成しえることなのかもしれない。
海老澤氏は「心を育てる、という意味ではスポーツ応援は大きな意味があると思います」とも。こうした数々の大きな舞台での得がたい経験と、野球応援により〝心と技〟を磨き上げてきた部員たち。その〝集大成〟は、11月26、27日に計3公演開催された定期演奏会だった。「笑いと発想のないバンドに未来はない」が合言葉だそうで、独創性は素晴らしいものがあった。
二部制の一部はコンクールで演奏した楽曲などのクラシックがメイン。二部はほとんどミュージカルのようで、自分たちで奏でる音楽をベースに歌ったり、踊ったり、演技をしたりと他で見ることのないような演目ばかりで、観客の誰もが楽しめる内容となっていた。
海老澤氏によると「昔から基本的に生徒主体。自分たちで予定を考えて、運営の部分などはまず生徒が責任をもってやるっていうところが第一です」と自主性を大切にしているという。定期演奏会のチケットはすぐに完売。その演奏、演出のレベルの高さは生徒自ら生み出すものだというから驚きだ。
「習志野高校吹奏楽部の音は、温かみのあるサウンドと表現されることが多い。周りからは〝習高サウンド〟と呼ばれています」
その秘訣は習志野市のある活動にあった。「本校の部員の3年生が市内の小学生に楽器を教える取り組みがあるんですよ。20年ほど前に始まり現在も続いています」。そこで教えてもらった小学生が、同部にあこがれを抱き入部することが多いという。
「だからOBも昔教えた小学生を見に、演奏会に来ることも多いんです」。地元に愛され、この幅広い世代でのつながりこそ〝習高サウンド〟が受け継がれていく理由なのかもしれない。












