第5回WBCの開幕を前に、臨む侍ジャパンの臨戦態勢が整いつつある。名古屋の強化試合から合流したエンゼルス・大谷翔平投手(28)は出場こそしなかったが、試合前のフリー打撃では規格外の弾道で超満員のファンのみならず、村上宗隆内野手(23=ヤクルト)や山川穂高内野手(31)らの長距離砲も〝降参ポーズ〟を取るほどの異次元の破壊力。そんな「打者・大谷」を、栗山監督がWBC終盤に「4番・投手」で起用する可能性が指摘されている。
4日の中日戦前のフリー打撃に登場した大谷は、チームに強烈なインパクトを与えた。2日に帰国し、まだ時差ボケも解消していない中、27スイングで4連発を含む9発の柵越え。バンテリンドームの右翼5階席に達した推定飛距離160メートルという規格外の弾道は、見守ったチームメートたちを驚愕させた。令和初の3冠王・村上でさえ「もう言葉が出てこない」と振り返ったほどで、栗山監督も「体の状態は問題ないなと」と満足そうだった。
一夜明けた5日は、新幹線で大阪入りした後、大阪市内の施設で40メートル程度のキャッチボールなど、投手としての調整。こうなるとがぜん、気になってくるのが、投手登板日の大谷を「何番で使うのか」という問題だ。
現状、野手としては指名打者限定で、打順は直近のMLB2年間で最も出場した1~3番までの上位が基本線。投手としては9日の第1ラウンド初戦・中国戦の先発が有力視されている。だが、準々決勝を勝ち進み、米国行きを決めた後にはどうなるか。栗山監督の日本ハム監督時代を知る関係者たちが予想しているのが「〝勝負手〟を温めていると思いますよ」。それが「4番・投手・大谷」だ。
これは対戦相手など外的要素に根拠に求めた采配ではない。10年間指揮をとった日本ハムでは、それを超越した〝魂〟の部分に根拠を求めた栗山監督ならではの勝負手でもある。実際に日本ハム時代の栗山監督が、先発投手の大谷を4番起用したのは、後にも先にも一度だけ。2017年10月4日のオリックス戦で、大谷のNPB最終登板となった一戦だった。
大谷もそんな指揮官の無言の〝メッセージ〟に見事に応え、9回を完封勝利、4番で先制点の起点となる安打を放つなど、この試合は当時の球界では前例のない取り組みでもあった本格的二刀流の〝完成日〟として語り継がれている。
今では日米で異を唱える者は皆無となった大谷の二刀流だが、挑戦開始当初は球界でも「無謀」といった否定的な声も少なくなかった。そんな中、栗山監督は当初から「エースで4番」を二刀流の究極の形とし、大谷のNPB最終登板でこれを実現。試合後に栗山監督は感極まった。
そんな生粋のロマンチストでもある栗山監督だけに、5年ぶりに師弟関係を復活させて戦うこのWBCでは「準決勝以降の米国まで行けば、きっと何かあるんじゃないかと思って見てますよ」と古巣関係者はニヤリとして〝予感〟を口にする。
1人の男が「エースと4番」を演じ、チームを世界一に導くという〝マンガ〟顔負けのシナリオが、現実の世界でも本当に起きるかもしれない。













