【前田幸長・直球勝負】12球団最速で開幕投手に内定した男に、沖縄・名護キャンプへ会いに行ってきた。日本ハムの8年目左腕・加藤貴之投手(30)のことだ。
昨年9月28日の札幌ドーム最終戦で、新庄監督が史上最速で翌年の開幕投手に指名。これには加藤も「新庄監督からちょっと前に聞いてはいましたけど、まさかあの場で発表するとは、びっくりしちゃいました」と振り返った。
昨季は2年連続で規定投球回をクリアし、キャリアハイの8勝(7敗)を挙げ、リーグ3位の防御率2・01をマーク。与四球は147回1/3を投げてわずかに11個と、シーズン最少記録を72年ぶりに更新した。7年目にして覚醒した理由は何なのか? 聞けば、6月7日のDeNAとの交流戦(札幌ドーム)でソトに投じた内角直球で空振りを奪った1球に目からうろこが落ちたという。
直球が140キロ前後の加藤は「初めての感覚でした。このボールでも空振りするんだ。力を入れない方が球が速く見えるのではないのか。たまたまの1球で感覚が降りてきた」と打ち明けてくれた。
それからは「力を入れずにミットを目がけて身を任せて体重移動をしていけば、自然と腕がついてきて、ある程度のところにいく」と、コントロールの極意をすっかりモノにしたようだ。加えて新庄監督から「四球を出すくらいなら、ホームランを打たれた方がいい」と言われ「そこから考え方が変わった。ど真ん中に投げても打ち取れる可能性もあるだろうし、全部ストライクを投げるつもりで去年は投げていた」と考えられるようになったのも大きい。
私も16年目だった2004年の巨人時代にリリーフで44試合を投げて与四球が2個で防御率2・38だった。体をこう動かせばボールはここへしかいかないという感覚をつかんだが、ちょっと見つけるのが遅かった(笑い)。私は中日時代に星野監督から「先頭打者と二死からの四球を出したらぶっ殺すぞ!」と言われて必死でコントロールを磨いたものだが、加藤は7年目にして四球を出さない再現性のあるフォームを習得できたのは大きいと思う。
50歳まで現役だった中日の山本昌さんも遅い直球ながら正確無比のコントロールで10年目以降に17、18、19勝と最多勝を3回も取った。四球が少なければ「マダックス」(100球未満での完封勝利)が今季はどんどん増えるに違いないし、省エネ投法を会得した加藤なら山本昌さんのような息の長い投手になれるだろう。
(本紙評論家)












