野球の神様がほほ笑みそうな振る舞いだ。WBC日本代表の宮崎強化合宿は19日、第1クールが終わり、メジャー組で唯一参加のダルビッシュ有投手(36=パドレス)が至るところで存在感を発揮。超一流のメジャーリーガーが、面識のなかった選手たちに積極的に声をかけ、チームに溶け込んでいった。

 このオフ、42歳シーズンまで現役を保証する6年契約をパドレスから提示され締結した右腕。実績に加えて、人間的にも成熟しているからこそ示されたラブコールだったはずだ。

 第1クール最終日のこの日、ダルビッシュにとっては何気ない自然なことだったかもしれないが、人としても際立った行動があった。チームバス発車時刻ギリギリまで、ファンの絶叫にも似たサインの求めに応じていた最中のこと。取り囲む幾多の通行人がそれまで踏み越えて行った〝落とし物〟に気づくと、身長196センチの身をかがめて拾い上げ、代表スタッフにそっと手渡した。何気ないシーンだったが、人として模範となる振る舞いだ。

 チームに有形無形の貢献を続ける最年長右腕について、栗山英樹監督(61)は「僕以上に野球のことだったり、今の選手たちの状態、将来のことだったり、広く言えば見ている子どもたちのことを含めてやってくれている」。

 ダルビッシュ自身もグラウンド外での言動の意識をこう語る。

「もちろん子どもたちもそうですし、こうやって来てくださるファンの方とかにも、ちゃんと思いを持つように、考えるようにしています」

 その上で〝思い〟の根拠について、こう続ける。

「自分が親になって、今まで独身の時とかは野球選手であることが一番でしたが、結婚すると自分の一番の役割は夫である。それから父親が二番目に来て、その後に野球だと思うんで、やっぱり夫であって、父親ってところに、そこをプロとして何とかしようとすると、そこにはどうしても目を届かせないといけないというところで(考え方が)変わってきたと思います」

 約1万9000人のファンが詰めかけ、子供たちの姿も多かった日曜日、かがんだ背中にダルビッシュの〝信念〟が見えた。