プロ野球が2月1日にキャンプイン。15年ぶりの古巣復帰となった阪神・岡田彰布監督(65)も、真新しいユニホーム姿でグラウンドに降り立った。昨秋の正式監督就任以来「強虎復活」を望む虎党も大いに盛り上がっているが、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏(81=京都大学高等研究院特別教授)もその一人。岡田監督の後援団体「メンバーズ80・岡田会」の会長職を発足当初から務める同氏が「岡田阪神」への熱い期待を口にした。

 ――待望の第2次岡田政権が誕生。期待も大きいのでは

 本庶氏 私はここまで一貫して岡田さんの再登板を願ってきました。つい先日も後援会の会合(1月24日、京都)で岡田監督とご一緒しましてね。「優れた人材が(阪神には)いるのですから、後継者を育成してほしい。性急に〝アレ〟にこだわりすぎる必要はない(笑い)。中長期的な観点で『勝ち続けることができる』チームづくりをしてほしい」と伝えました。彼にはその能力があるわけですからね。

 ――会合には阪急阪神ホールディングスの角和夫会長(73)も同席

 本庶氏 角さんにね、お願いしたんですよ。甲子園球場内にたくさんカメラを設置してね、AIを活用したデータ分析をもっとやりましょうよと。(すでに導入されている)トラックマンやホークアイだけでなく、球審のストライクゾーンの判定も絶対にAIにやらせたほうがいい。

 ――「甲子園スマート球場化計画」は、前回インタビュー(20年9月)でも「球審のAI化」の必要性について言及されていた。阪急出身の杉山健博氏(64)がオーナーに就任したことも前向きな変化として捉えたい

 本庶氏 角さんは「『タイガースの阪急化』というのは絶対にあり得ない」と言ってました。「これは一時的な姿。ただ、(球団)フロントと監督サイドの連携はしっかりさせなければならない。(杉山氏のオーナー就任は)そのための人事である」と。せっかく岡田監督に来てもらったわけですから、力を存分に振ることができるよう、球団の態勢を直したいと。トップがしっかりと岡田さんをサポートしてくれるのは、私としても頼もしいですね。

 ――佐藤輝、伊藤将、中野らの加入もあり戦力は底上げできている。だが頂点にはあと一歩のところで相変わらず届かない。今までの阪神に足りなかったものは

 本庶氏 決定力がなあ…。決定力というものが決定的に足りない(笑い)。ここぞという場面で「あぁ~…」というタメ息ばかりが球場から聞こえてくる。そんなシーンをたびたび目にしてきました。投手陣は頑張ってくれているわけだから、打つ方だよね。

 ――主砲としての活躍が期待される佐藤輝は、秋季キャンプで岡田監督から厳しい言葉を浴びた

 本庶氏 まだ彼は若いしね。悩んで深みにハマったところもあると思うけど「明るく輝く」ためにはもう少し磨きをかけないと(笑い)。

 ――そのあたりも岡田監督の手腕に期待

 本庶氏 それはもうね。岡田監督の大きな課題ですよ。佐藤輝を潰すようなことはあってはならない。うまくやってくれると思いますよ。

 ――「ポスト岡田監督」としては、今岡氏、藤川氏、鳥谷氏らの名前が挙がるが

 本庶氏 今、名前が出た3人に関しては、岡田さんの頭の中にあるでしょうね。何が何でも生え抜きにこだわる必要はそこまでないでしょうが、球団としての歴史の積み重ねは必要。人材を継続的に育てることが阪神の伝統になっていくわけですから。

 ――阪神ファン歴は70年近い。そんな本庶先生ですら、拝めた優勝は数える程度。日本一にいたっては一度きり。〝応援しがいのないチーム〟を長く愛することができた理由は

 本庶氏 ホントにねえ。なんでかなあ…。頼りないところも阪神の魅力なのかもしれない(笑い)。自分でも分からないよ。理屈じゃないんだ。藤村富美男さんが監督だったころから〝浮気〟は一度もしたことがないよ。阪神ファンを辞めようと思ったこと? 一度もないね。

 ――直近で甲子園に来たのはいつごろに

 本庶氏 去年は一度も行けなかったから一昨年かな。角さんに声をかけていただいたんだよ。最後に誰かがホームラン打ってくれたんだけど、負け試合はね、記憶から消えちゃうんだ。だから覚えてない(笑い)。

 ――現地観戦した際の勝率は

 本庶氏 悪いよ。僕が見に行くとね、圧倒的に負けてばっかなんだ(笑い)。だからこそ勝てた試合は大切に覚えている。岡田さんが監督になったわけだから、今年は行きたいよね。優勝決定戦が甲子園であるなら見に行きたいなあ。

 ――ぜひ特等席から胴上げの瞬間を。ビールかけにも参加されては

 本庶氏 それは遠慮しとくわ。外から見ているだけで十分です(笑い)。

 ☆ほんじょ・たすく 1942年1月27日生まれ。京都大学医学部教授、同大医学部長などを経て2018年4月より京都大学高等研究院副院長・特別教授。同年秋に、がん治療薬「オプシーボ」の開発にかかわるなどの功績をたたえられノーベル生理学・医学賞を受賞した。2020年から京都大学大学院医学研究科付属がん免疫総合研究センター長。文化勲章。文化功労者。