プロ野球は一般社会よりも甘い! 新任のソフトバンク・斉藤和巳投手コーチ(45)がインタビューに応じ、現場復帰すぐの一軍抜擢に不退転の覚悟を示した。現役時代、2度の沢村賞(2003年20勝3敗、06年18勝5敗)に輝くなど圧倒的な存在感を示した「平成の大エース」「負けないエース」が、引退から10年。社会の厳しさを痛感したという男は、すべてに忖度なく答えた。

 現役時代は通算150試合で79勝23敗という圧倒的な勝率を誇った。強い精神力で3度メスを入れた右肩のリハビリに励んだが、2013年に引退。それ以来となる現場復帰はいきなりの一軍抜てきだった。

「ビックリしたよ。まさか配置が一軍とは思わへんから、二軍からかなって思ってたから。自分自身、性格的に向いてないんじゃないかって思うことも多かった。でも、とうとう来たかってのが素直な気持ち。周りに相談して背中を押してもらって、最後決めたのは自分。決めた以上はやる、っていう覚悟がある」

 常勝再建を期す球団に請われての就任。勝ち続けてきた男は色を出すだけではなく、結果にこだわり、そこに覚悟の形を求める。

「基本的に誰しも嫌われたいなんて思わない。でも、別に好かれようとも思わへん。好かれようと思って頑張る労力がもったいないから。ただ、自分がしっかりと信念持って、それでできないんだったら自分の力のなさよ。それは潔くね、自分からその場から去らんとアカン。そういう気持ちで受けたつもり」

 厳しさを求められての就任。アプローチは手探りだが、揺るがないものがある。

「俺はプロより社会の方が厳しいと思ってる。プロの方が甘い。結果残したら許されるところがあるから。お金で解決できることもあったりする。そんなん、世の中ないからね。勝負の世界の厳しさはあるけど、世の中には違う厳しさがある。でも、やめてみないと分からないこと。選手は厳しい環境、状況に向き合わないといけない。投手はマウンドで誰も助けてくれない。選手にも言ったけど、自分で自分を助けられるような時間を過ごすには、自分に厳しくないといけない。自分に厳しくないと、他人にグチも何も言う権利なんてないから」

 引退後は解説などの仕事を主に、いち社会人として生きてきた。右腕一本で地位を築いた男。身に染みたものがある。

「全部大変。お金稼ぐのが大変なんやから。だって現役の時なんて上の方にいったら、1勝したら1週間で何百万って稼いでるわけやん。そんな仕事ないよ。年間で何千万とか億上がる仕事なんてない。お金稼ぐことも大変やし、常に必要とされないといけない。こういうのを経験したら大変さを感じるやん。社会に出た方が大変よ」

 現場に戻ったからには結果を求められる立場。いかに投手陣の強化にアプローチするのか。そして、ポテンシャルの高い若手をどう導くのか。

「今は情報がいっぱい与えられる状況だから、選択肢が多いことの良しあしがある。そこは絞ってやっていく方がいいと選手には伝えてる。とにかくシンプルに。そんな三つも四つもいっぺんにできる選手なんかおらへん。できひんから、今のこの現状なんやから。だから、シンプルに伝えるようにするし、シンプルな考え方をしようと話をしてる」

 データ野球が隆盛となる中で警鐘を鳴らす。それは選手をいい方向に導く手段の精度を高めるためだ。

「大きな危険がある。だって、マウンド上でピッチングしてるわけじゃないから。バッターと対戦してんだから。一番の答えは、バッターとの結果。自己満足じゃあかんわけやから。それは選手にも伝えてるけど、どこまで理解してるかは分からない。ただ、それはデータを取ってる人たち、フロントの人たち含めて理解しようとしてる。誰が偉いってわけでもない。そこをうまく共有できたらいい。最終的に選択の権限を持ってるのは選手。どうアプローチしていくのが一番いいかっていうのを話し合う立場だと思ってる」

 このオフ、球団は3年ぶりのV奪回に向けて大型補強を敢行。レンジャーズを自由契約となった有原、ロッテを退団したオスナと実績ある投手も加わった。勝つための戦力運用、次世代のエース育成など斉藤コーチの手腕に注目が集まる。覚悟を持っての一軍投手コーチ就任。締めの言葉も斉藤和巳らしかった。

「結局、結果がどうなるかよ。それに対して自分がどう思うのか。もうちょっと頑張ってみようと思うなら次に進めるかもしれんけど、いやいや俺じゃない、力不足やなって思ったら、その時は潔く決断する時と思ってる」