【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「トリュフのかかったものは二度と食べたくないね。においだけで気持ち悪くなる。あとはピーナツバター&ハニーラップ。ピーナツバターもハチミツも別々だったら食べられるのに、よくやっていた2つをトルティーヤに巻いて食べるのは考えただけで吐き気がするくらい。レモン・チキン・パンチェッタも食べられなくなった。だから、抗がん剤治療の時に好物は絶対に食べちゃダメだ」
大腸がんステージ3を克服して球場に戻ってきたトレイ・マンシーニに、闘病生活を乗り切るためのアドバイスを聞いた時に出てきたエピソードだ。
「抗がん剤治療後3~4日は気持ち悪い。吐き気がするから何も食べたくもないし飲みたくもないし、治療の前夜に食べた物や、1~2日後に少し具合が良くなったかなと思って食べた物で、二度と見たくもないと思うものがいくつかある。そんな中、助けになったのは治療経験者から聞いたジンジャーミントティーだった」
「あとは、統計データをググらないこと。数字は気にしちゃいけない。なぜなら、データが示している時より、確実に治療法は進化しているから。実際にはたくさんの人たちがサバイブできるから、無駄に調べちゃダメなんだ。もうダメかもと思って、自分の生き方に影響を与えかねない。僕は調べてしまった。まさか僕の年齢で大腸がんなんて、といろいろ知りたかったし、今でも調べてしまう時があって、そのクセをなくそうと努力しているところ。出口のないトンネルに迷い込んでいくように落ち込むから。病と闘うのに一番大事なのは、気持ちを落とさないこと」
トレイは、自身の闘病生活の話を聞かれたら、この2点を伝えるようにしているそうだ。それは、自分自身が治療のつらさで苦しかった時に受けたアドバイスでもあるからだ。
「治療をしてくれたボルティモアのジョンズ・ホプキンズ病院にはメンターを紹介してくれるシステムがあって、抗がん剤治療経験者、がん克服者との出会いが本当に助けになった。ささいなことも話し合えたし、苦しくて仕方がない治療が自分を生かしてくれるという証しを目の当たりにすることができた。すごくいいシステムだと思うし、多くのところが導入していたらいいなと思う。僕も彼らのように少しでも誰かの力になりたい」
クラブハウスでは、今でもトレイにこの話を聞きに行く記者が絶えない。
2020年、28歳の誕生日直前にステージ3の大腸がんと診断。突如野球生活を中断し、手術、抗がん剤治療を経て、21年にカムバック賞を取るほどの大活躍。22年には、夏にトレードで移ったアストロズがワールドシリーズ優勝と、闘い続けるトレイの姿に勇気をもらわずにはいられないからだ。
最後に、健康診断の重要性を追記したい。
「僕の場合は、健康診断で血中の鉄分濃度がやたら低かったことが発見につながった。アスリートであるおかげで健康診断はまめに受けているけど、発見の早さで方向性が変わる。1年に1回でいいから、皆に受けてほしい」
トレイは今月10日、交際4か月から闘病生活を一緒に乗り越え、支え続けてくれたパートナー、サラさんと結婚。末永く幸せになってほしい。
☆トレイ・マンシーニ 1992年3月18日生まれ。30歳。米国・フロリダ州出身。193センチ、97キロ。右投げ右打ちの外野手、一塁手。2013年のMLBドラフト8巡目(全体249位)でオリオールズから指名されプロ入り。16年にメジャーデビューし、初打席初本塁打。17年からレギュラーに定着し同年は打率2割9分3厘、24本塁打、78打点。以降3年連続で20本塁打以上をマークするも、20年春に大腸がんを患い手術。同年を全休した。21年にカムバックして21本塁打を放った。22年8月にアストロズへトレード移籍。今季は主に指名打者として打率2割3分9厘、18本塁打、63打点。












