出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させることを目的とした「現役ドラフト」が9日に初めて実施され、各球団から計12選手の移籍が決まった。各球団が2人以上を供出し、最低でも1人を獲得する新システム。初の試みを前に、編成担当者たちの間でさまざまな〝葛藤〟も生まれていた。

 フタを開けてみるまでは、懐疑的な声も少なからず上がっていた。それはオフに入り、来季に向けた戦力の見直しを行う編成担当者からだった。

 あるセ球団の編成担当は「当然、クビの切り方も変わる。本来なら切る選手も、現役ドラフトのために2人は残さないといけない。そのうちの1人は獲られるとしても、2人とも獲られるとは限らない。お互いに本当に必要な戦力のであれば、シーズン中にトレードで動いているはず」。各球団が戦力外の当落線上の選手を押しつけ合うことになるのではないか…というものだった。

 しかし、実際にはオコエ瑠偉外野手(25)が楽天から巨人に移籍となるなど、当初危惧されていたような事態は避ける展開となったようだ。

 また、別の編成担当からは市場に出される選手に対して〝事前通達〟の必要性を唱える声も上がっていた。というのも、機密保持の規定では公表されるのは移籍が決まった選手のみ。「球団内においても、当該情報を真に知る必要のある役職員のみに、秘密保持義務を付したうえで当該情報を開示する」と定められた。

 そこで「リストに載せる選手にはあらかじめ知らせ、ある程度覚悟させておくべきなのか。それとも、ビクビクしながら過ごし、当日に突然知らされるほうがいいのか。自分は載っていたのかとか、変な噂や憶測を立てられてモヤモヤせずに済む。知らされて残っても、自分が置かれた立場を理解して来年につなげられる気もするが…」と話していた。

 今回は2巡目の指名がなく終了した初の「現役ドラフト」。肝心なのは、新天地へ移籍した選手たちが来季、どれほどの出場機会を得られるのか。今後の検証と、必要に応じた柔軟な対応も求められそうだ。