この男の言葉だからこそ、鷹の本気度が伝わる。ソフトバンクは、海外FA権を行使した日本ハム・近藤健介外野手(29)の獲得を目指している。楽天を除くパ・リーグ5球団による争奪戦に発展した中、すでに6年30億円超の大型契約を提示し、2回目の交渉には近藤が心酔する長谷川勇也打撃コーチ(37)が藤本監督とともに出馬。過渡期を迎える常勝軍団にあって、近藤の必要性を過不足なく訴えられる適任者だった。

 長谷川コーチはこう言う。「うまい選手はたくさんいるが、周りの人間やチームにいい影響を与えられる選手はそう多くはいない」。球団からの打診を受けて交渉の席についたのも、近藤だからだった。ソフトバンクは札幌遠征のたびに、オンリーワンの姿を見てきた。

「僕も札幌に行くと見たことがある。しっかり試合で何本もヒットを打って、それでも試合が終わったらすぐ打撃練習に来るんですよね。そりゃあ、毎年3割打って、出塁率のタイトルを常に取れるような選手はやることをやってるなと思いましたよね。単純に『この選手はすごい』と思った」

 現役時代「求道者」と呼ばれた長谷川コーチは、こうも続けた。

「そういう選手が一人でも増えると、チームは長く、強い集団になる。僕が若い時は小久保さんだったり、松中さん、(斉藤)和巳さんがそうだった。やっぱり朝早く球場に行くと必ずいる。ランニングやウエートをガンガンやっていた。自分と向き合う時間を自分で作っている人たち。僕はそれを見て感じた人間なんで、少しでも若い人たちに感じてもらえればと思って、現役時代はやっていた。なかなかできなかったけど、自分のために、チームのために、自分の力で立場を築いた先輩たちから感じたものを伝えたかったから」

 ホークスには投打に才能豊かな若手が数多く在籍している。近藤は若鷹と年の離れていない29歳。一流は一流を知る――。求道者出馬の真意がそこにあった。