巨人の期待は「確信」に変わるはずだ。今季限りでソフトバンクを退団した松田宣浩内野手(39)の巨人入りが11日、決まった。球界でお茶の間にもその名が浸透する「熱男」。ホークスで6度のリーグ優勝、7度の日本一に貢献した通算1831安打、同301本塁打を誇る実力者は、ムードメーカーとしての役割にも期待がかかる。多くの野球人から尊敬の念を抱かれる男は、巨人の〝盟主復権〟に身を捧げる覚悟だ。

 巨人が欲した理由は、この男の言葉を聞けば、誰もが納得するはずだ。ソフトバンクの大黒柱にして主将・柳田悠岐外野手(34)は、松田を「ミスタープロ野球」と呼び、慕ってきた選手の一人。鷹の絶対的主砲は「松田宣浩の真の価値」を誰よりも理解している。

 9月上旬、松田から進退を直接伝えられた。「寂しくて、精神的にも本当にしんどかったです」。柳田の珍しく暗い声が、喪失感を物語っていた。それほど大きな存在だった。

「僕は今年の松田さんを見て、改めてその偉大さに気づかされました。あれが超一流のプロ野球選手の姿なんだと。松田さんは圧倒的な才能でソフトバンクの常勝時代を築いて、(WBC2度出場など)日の丸も背負った実力者。そんな選手が今年はベンチに座る時間が長かった。でも、松田さんの振る舞いは一切変わらなかった。ベンチのムードを大切にして、若い選手がのびのびできる環境をつくってもらった。周りに気を遣わせない。分かっていても難しいことで、なかなかできることではないんです。それをバリバリのレギュラーだった人がやるから影響力がある。そこが『超一流の証し』。松田さんを見て、僕らはここまで育ててもらいました」

 お茶の間のイメージとは違い、繊細で生真面目な性格を知っている。視野が広く、普通の人間なら気疲れしそうな周囲への気遣いや気配りができる選手。柳田は「野球人の鑑」のような男に、かねて尊敬の念を抱いてきた。

「こんな選手、他にはいません。僕は『松田宣浩』という選手がそこにいるということが、単純に数字などでは測れない、かけがえのないことなんだろうと思います。移籍したチームを劇的に変えられる可能性のある選手。そういう特別な選手だと思います」

 個人的な感情に引っ張られず、冷静に淡々と語る姿が「松田の価値」を物語っていた。データや数字では叩き出せない無形の力――。現場で接してきた人間だからこそ、確信できるものがある。2年連続でリーグ優勝を逃している巨人にあって、新風を吹き込む稀有な存在に違いない。

 柳田は最後にこう語った。

「今まで僕が打てない時に、打って救ってくれた。苦しい時に声をかけてくれた。僕は松田さんに救ってもらってばっかりだった。だから、もう松田さんに救ってもらえないんだって思うと、正直、今もしんどいです。でも、めちゃくちゃ野球が好きな人。もっと野球がしたいんだなって思いました。野球への向き合い方、取り組む姿勢、他の選手とは次元が違いました。松田さんが残してくれたものを、しっかり受け継いでいきたいと思います」

 柳田は熱男との別れを惜しみつつ、その魂が広く浸透し、野球界の財産となることを望んでいる。