盟友が見てきた飛躍の軌跡――。海外FA権を行使してメジャー移籍を目指すソフトバンク・千賀滉大投手(29)。育成入団から「鷹のエース」に成長した右腕が、野球人として尊敬してきた人物が鷹の主砲・柳田悠岐外野手(34)だ。2010年ドラフト2位の柳田と育成4位の千賀は「同期」。公私ともに仲が良く、互いに歯に衣着せぬ物言いができる「心の友」としても知られる。

 かつて千賀に衝撃を与えたモンスターは、飾らない言葉で唯一無二の盟友に温かいメッセージを送った。「やっぱり、夢がありますよね、千賀には。もう、引退してメジャーの試合を見に行きたいくらいです。チケットを出してもらえるように、千賀にお願いしておこうと思います」。いつもの柳田らしく、柔らかい表現だった。千賀の能力と努力を認め、右腕を取り巻く状況すべてを理解している。重圧をかけるわけでもなく、仲間として抱く率直な思いだった。

 福岡・西戸崎での若手時代、千賀に強烈なインパクトを与えた人物こそ柳田だった。愛知・蒲郡高から育成入団した右腕は、柳田が遊び感覚で入ったブルペン投球に度肝を抜かれた。「冬ですけど、140キロ台後半は出てるんじゃないかって球を投げてましたからね。ギーさんみたいなポテンシャルの高い人たちが入ってくる世界。あの時、プロがどんな世界かを悟って、将来を案じたのを覚えています」。後にそう回想した千賀。2012年に支配下昇格を果たし、エースの地位を築くと今季まで7年連続2桁勝利を挙げた。2017年WBCでは日本人唯一の「優秀選手」に選出。今オフ、複数のメジャー球団が「1億ドル(約146億円)」規模の大型契約を準備して争奪戦を繰り広げるまでになった。

 出会って12年、千賀の立身出世を見届けてきた柳田はこう語る。「千賀がここまで来たのは、うまくなりたいって気持ちが人よりもとにかく強かったから。千賀は『周りは周り、自分は自分』というスタイルを貫いてきた。彼はずっとそういうタイプでした。やっぱり、そこだと思います」。今も2人だけで食事に行く仲だ。「周りに流されない芯の強さが飛躍の秘密」。腹を割って話せる間柄だからこそ分かる「世界の千賀」が突き抜けた理由だった。

 時代を先んじようとすれば、時に好奇の目を向けられることもある。それが未踏の歩みなら、なおのこと。千賀にしか分からない苦悩もあったかもしれない。かつて自身もメジャーへの強い憧れを持っていた柳田。「千賀は、本当に夢がある」。アメリカでも続く盟友の立身出世に、早くも心を躍らせている。