【石毛博史 火消しは任せろ(14)】近鉄で初めて迎える春のサイパンキャンプ。巨人では優勝することを前提にして春のキャンプからミーティングを重ね、逆算して動いていく。リーグ戦をどう戦って日本シリーズをどう勝ち上がるかまで…。近鉄は優勝を目指してはいてもオープン戦、シーズンに向けての準備をする。当たり前のキャンプの空気感です。練習量は変わらなかったけど、詰まった練習をしてフリータイムで体の手入れをし、自分で考えて自由にできた。サイパンキャンプでは休日に息抜きでショッピングをしたり、海に入ったり、リフレッシュもできましたね。

 巨人時代の休日は完全に体を休めるためのオフなのでゴルフも行かないし、パチンコもできなかったので、オフに関しては自由で楽しもうというね。宿舎のプールのバーで佐々木恭介監督と一緒に飲ませてもらうこともありました。兄貴肌の熱血漢でみんながついていってました。すごくフレンドリーで選手と指導者の距離が近かった。

 オンオフのスイッチの切り替えが上手なチーム。お酒を飲み始めるとみんな野球の話をすごくするんです。巨人時代はチームメートと野球の話をほどんどしなかったけど、近鉄では「周りから見たら石毛はこういう投手だよ」とかアドバイスしてくれる。苦手な打者の攻め方を先輩が教えてくれたりとか、17年間のプロ生活でこの時期が一番野球が楽しかったですよ。

 コーチは小林繁さん、真弓明信さん、梨田昌孝さんと「男前トリオ」なんて言われてね。小林さんはすごい理論派。対打者の心理、駆け引き、ここに投げたらこう反応するとか、走者をノーマークにしないやり方とか。技術的なことじゃなくて取り組み方、向き合い方を叩き込んでくれました。

 今までは自分の調子がよければ打たれない、くらいの気持ちでいた。でも年齢を重ねていくんでそこに絶対的な理論を入れて、ダメなら修正し、よければ伸ばす。小林さん自身もトレードで巨人を出された経験があるので、1年目は同じ境遇の選手ということで近寄ってきてくれました。いい出会いでした。

 1997年は大阪ドームの1年目。リリーフでずっとやってきて先発に転向したのでルーティンも変わる。先発は肩をつくったあとでベンチ前でキャッチボールをしてプレーボールを待つでしょう。これが全然自分に合わなくて…。気持ちが途切れちゃうんですよ。セレモニーや始球式も入ったりすると間が空いちゃう。なので試合開始直前までブルペンで投げてリリーフみたいに出ていってました(笑い)。

 ビジターの時は試合が始まってもブルペンにいて、1回表がチェンジになったら出ていく。5試合目くらいからそのリリーフスタイルに変えたら結果が出ました。でも、1年目は13試合に先発して4勝3敗。まだ僕の中には迷いがあった。やっぱりリリーフやりたいなって…。