【赤坂英一 赤ペン!!】スポーツ総合雑誌「Number」の仕事で岡田彰布氏に話を聞いたのは、阪神の次期監督に内定したと報じられる約1か月前、8月22日のことである。甲子園の近くのホテルのラウンジで、その甲子園ではちょうど高校野球の決勝戦が行われていた。

「きょうは仙台(育英)勝つわ。仙台強いわ」

 のっけからこんな予言で始まったインタビューは約1時間。終わる間際に「また阪神の監督をするつもりはないか」と聞くと、はっきりと答えなかったものの、こんなコメントが返ってきた。

「非常にいまは、歯がゆい気持ちで見てるのはあるね。いや、いま強いよ、阪神。そら力ある。いまセ・リーグで一番強いと思うわ。間違いなしに、戦力的にはナンバーワンやね。総合的にね、ピッチャー、野手見てね。なんで勝てんのやろなー、と思うな。この何年かで一番強いよ、いまが」

 再登板への意欲がヒシヒシと伝わってくるような熱いセリフだった。

 この日のインタビューのテーマは「名監督論」。しかし、岡田氏には理想とする名監督像がない。

「なんでかと言うと、俺にはやりたい野球、理想とする野球というものがないんよ。監督いうのは与えられた戦力で、どうやったら勝てるか、こういうふうにすればええんと違うかと、俺はずっとそうやってきたし、それが理想と思ってるから」

 その好例が、前回阪神監督時代のリリーフ投手陣「JFK」(ウィリアムス、藤川、久保田)。3人は岡田監督が望んでかき集めたのではなく、球団から与えられた戦力をいかに生かすか、考えに考え抜いた岡田監督の“作品”だったのだ。

 そんな独自の名監督論を持つ岡田氏は、かつて侍ジャパンの監督を要請されながら断っている。オリックス監督だった2011年、東京ドームで巨人との交流戦を終えた後、当時の熊崎勝彦コミッショナーに食事に誘われたときのことだった。

 2年後の13年には第3回WBCが行われる。そこで侍ジャパンの監督を引き受けてもらえないか。そう切り出した熊崎氏に、岡田氏はすぐさま「嫌です」と答えた。

「なんで嫌か言うたら、(侍ジャパンの)選手を選ぶのが嫌なんよ。自分のやりたい野球がないんで、理想とするチームもない。そやから、12球団の選手を選択するのが嫌なんです、僕には向いてませんって答えたわ」

 岡田氏の持論は「与えられた戦力で勝つのが名監督」。この信念こそ、来季の阪神再生にうってつけのように思える。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。