体操で五輪個人総合2連覇の内村航平(31=リンガーハット)が13日、全日本選手権の鉄棒で優勝を飾った。圧倒的な演技と高得点(15・700)で来年夏の東京五輪に夢は膨らむばかりだが、五輪出場へどんな条件があるのか。複雑なルールを解説する。

 体操ニッポン男子は18年秋の世界選手権でいち早く団体枠(4人)を得たが、内村はすでに鉄棒に専念することを明言。今後の選考基準次第だが、内村は団体メンバーではなく、最大2枠の個人枠を目指す公算が大きい。

 では、この個人枠はどうやって決まるのか? これがかなり難しく、選手の中にも理解できない人がいるほど複雑だ。まず、18年11月から開催中の種目別ワールドカップ(W杯)の全8大会に出場してポイントを加算する方法がある。この8大会のうち各種目でベスト3のポイント合計で各1位になった選手に枠が与えられ、上限は各国1枠。日本勢は13日現在、亀山耕平(31=徳洲会)が「あん馬」2位、米倉英信(23=同)が「跳馬」2位、そして内村のライバル・宮地秀享(26=茗渓クラブ)が「鉄棒」1位タイだ。W杯はコロナ禍で先行き不透明だが、少なくとも前述の3人にはチャンスがある。

 一方、内村はW杯に出場しておらず、今からポイントを稼ぐのは不可能。そうなると残された出場への道は国内選考だ。その前に、前述のW杯で獲得できる枠のほかに日本として枠を得る必要がある。

 そのカギを握るのが個人総合W杯とアジア選手権。この2大会は「個人」ではなく「国」に枠が与えられ、その場合に内村は国内の選考に勝ち抜かなければならない。ちなみに、個人総合W杯シリーズではポイント合計上位3か国に個人出場枠が1つ与えられ、ここで枠が取れなくてもアジア選手権で最後の1枠ゲットのチャンスが残される。内村は当該大会には出場しない。つまり、個人総合W杯に出場する萱和磨(24=セントラルスポーツ)らの後輩たちに活躍してもらい、枠を持ってきてもらう必要があるのだ。

 内村の視点に立てば、種目別W杯で亀山、宮地、米倉が1位にならず、萱らに2枠を取ってもらうパターンが五輪出場の可能性は高まる。その2枠を巡って全種目のスペシャリストたちがしのぎを削るのだ。

 では、国内枠を取得した場合にどうやってスペシャリストが選考されるのか。この選考基準はコロナ禍によって白紙。しかし、昨年11月の時点で草案は出来上がっており、その基準によれば、20年4月の全日本選手権の予選・決勝、同5月のNHK杯の予選・決勝、同6月の全日本種目別選手権のポイントが高い選手が枠を獲得できる。新しい基準は今後の理事会で決定するが、仮にそのように想定すると、内村は来年春の全日本選手権で鉄棒の予選でまずは絶対に6位に入り、同決勝へ進むことが大事。6位にさえ入ればNHK杯に出場でき、ポイントを加算できるからだ。もちろん、ここでライバルとなるのは鉄棒だけでなく、全種目のスペシャリストたちだ。仮に種目別W杯で日本勢が誰も枠を得られなければ、鉄棒の宮地だけでなく、亀山や米倉もライバルとなる。内村と宮地が鉄棒で2人選出するパターンも考えられるが、ポイントを食い合うために可能性は低い。

 ただ、個人枠で五輪を目指すなら、すべては個人総合W杯、アジア選手権で枠が取れるか次第。ある意味、内村の最初のハードルは〝他力〟にということになる。