体操の全日本選手権(群馬・高崎アリーナ)の女子個人総合で優勝した村上茉愛(24=日体クラブ)が12日、新型コロナウイルス禍で来年夏に延期した東京五輪への複雑な思いを口にした。

 この日、2年ぶり4度目の優勝を飾った村上はインタビューで東京五輪への気持ちを問われると「ホントにこの先どうなるのか分からない。自分だけじゃないし、みんなそう思っているので…」と話した。前日会見(9日)でも先行き不透明な今後について「世の中の状況でどうなるか誰も分からない状態。大会があると言われても、明日にはどうなるか分からない。この状況はこれからもあると思う」と語っている。

 東京五輪は村上にとって集大成の舞台。五輪の最終演技の着地をもって現役引退を決めている。だが、世の中は開催を危ぶむ声、中止を求める声が大半を占めている。心の中で思っていても、口に出せないもどかしさがある。

 先月8日、五輪開催の〝試金石〟と言われた国際大会の閉幕セレモニーで、体操界のキング・内村航平(31=リンガーハット)はリスクを背負って本心をハッキリと口にした。

「〝できない〟ではなく〝どうやったらできるか?〟を皆さんで考えてほしい。できないと思わないでほしい」

 このスピーチはアスリートや五輪関係者から称賛を浴びる一方、現実を見ていないと批判の対象にもなった。それらを全て受け入れて発信した内村の覚悟に、村上は大きな感銘を受けたという。

「最初に思ったのは、自分じゃ言えないなって。みんな思っていることは同じだと思うけど、どうしても口にできなかった。それを言ってもらって、うれしかった」

 さらに村上は「難しいな」「なかなかこういうコメントって」と慎重に言葉を選びつつ「航平さんって、やっぱりすごいなって思いました」と敬意を抱いていた。