かつての〝ハニカミ王子〟はどうなるのか。男子ゴルフの石川遼(30=CASIO)が米国から帰国後の自主隔離期間中にゴルフや飲み会を行っていた問題で、日本ゴルフツアー機構(JGTO)は15日に1か月の出場停止処分を発表。今季ツアーの残り3試合に出場できなくなったが、痛いのはそれだけではない。今回の騒動によるイメージ悪化により、今後はスポンサー離れの危機に直面している。

 JGTOは15日の臨時理事会で、石川に対する1か月間出場停止処分を決定。本人から提出されていたJGTOの副会長と理事の辞任届も受理した。処分理由については「(石川は)いわゆるバブル状態にあると思い込み、屋外でのゴルフプレー等が許されていると勘違いしていた事情は理解できなくはない」としつつ、社会全体が新型コロナ対策に懸命に取り組む中で「重い社会的責任を負うJGTO副会長、JGTOツアーメンバーとして軽率であることは否めず」と説明した。

 これを受けて、石川は「今回の処分を真摯に受け入れ、今後このようなことがないように努める所存です。そして、こんな自分でも応援してくださる方がいる限り、最後まで諦めずゴルフを頑張りたいと思います」とコメントを発表した。

 処分が決まったことで今回の問題はひと区切りがついたが、石川に待ち受けるのはイバラの道だ。JGTOや選手会の要職を務め、他の選手の模範となるべき立場で自らルールを破った〝罪〟は重く、大きなイメージダウンは避けられない。あるツアー関係者は「社会全体がコロナで敏感になっているときに軽率な行動だった。あの時と同じようなことが起きるかもしれない」と指摘した。

「あの時」とは、2008年に結んだトヨタ自動車とのスポンサー契約が12年3月で終了した一件だ。表向きは「契約満了」と発表された一方で〝無免許運転〟が影響していたと言われている。石川はその前年(11年)に、国内での運転が認められない米国で取得した国際運転免許証での運転が発覚。しかもその車が優勝副賞で得た、契約外メーカーのアウディ車だったこともトヨタ側の神経を逆なでしたという。

 これでマイナスイメージがついたせいか、同社との契約満了と前後して08年のプロ転向直後に結んだNTTドコモやパナソニックといった大手企業とのスポンサー契約を終えている。現在の石川はカシオ計算機と所属契約、全日空やアサヒビールなどとスポンサー契約を結んでいる。こうした企業との関係も、今回の騒動が影響を与える可能性があるという。

 大手広告代理店関係者は「以前に(競泳の)瀬戸大也選手が不倫で契約を解除されたが、根本的には不倫は当事者間の問題。それに対して新型コロナの感染対策の規則を破ることは他者に迷惑をかけ、それこそ命を危険にさらす可能性もある点で比較にならないほど責任は重い。スポンサー企業へのダメージは決して小さくなく、今後契約への影響は避けられない」と指摘する。

 瀬戸は昨年9月に一般女性との不倫が報じられ、日本水泳連盟からは活動停止などの処分、さらに当時所属していたANAとの契約も解除された。今回も不祥事という点では共通するが、新型コロナ禍での隔離破りは変異株の国内流入など大きな危険をもたらす可能性も否定できず、より〝深刻〟というわけだ。

 同関係者は「(スポンサーの各企業は)世論の動向も慎重に見極めているのでは」。すぐに契約打ち切りとはならないとみられるが、契約更新のタイミングで延長せず、そのまま関係を終わらせる企業があってもおかしくはない。その代償は高くつきそうだ。