ウクライナ戦争で裨益(ひえき)しているのが北朝鮮だ。7月13日、北朝鮮はウクライナで親ロ派武装勢力が実効支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を承認した。
ウクライナは腹を立てて、北朝鮮と国交断絶をした。これまでウクライナと北朝鮮は軍事面で協力関係にあった。北朝鮮の核開発と弾道ミサイル開発にウクライナから技術が流出したという疑惑もある。にもかかわらず北朝鮮はなぜ両「人民共和国」の承認に舵を切ったのだろうか。どうも2つの要因があるようだ。
第一は経済協力だ。両「人民共和国」では戦争で破壊された建築物の再建が焦眉の課題だ。
ロシアの評論家ドミトリー・ヴェルホトゥロフ氏はこう述べる。
<現場監督の間には「タジク人が1週間ですることを、北朝鮮人は半日あれば十分だ」という諺(ことわざ)さえ伝えられていた。ドネツク人民共和とルガンスク人民共和国の都市では、住宅や公共の建物がひどく破壊された。それらの復興には、大勢の労働者が必要とされている。基礎工事は、ロシアからの作業班が効率的に行うことができる。手間のかかる建物の内装は、北朝鮮建設労働者の専門だ。したがって、ドネツク人民共和とルガンスク人民共和国では、北朝鮮労働者が緊急に必要とされている。>(8月16日「スプートニク」日本語版)。
北朝鮮は報酬をロシア・ルーブルで得る。それでロシアから石油、食料品、医薬品などを購入するのであろう。
第二は軍事だ。前出のヴェルホトゥロフ氏はこう述べる。
<北朝鮮にとって最も価値のあるものは、戦利品の武器の調査だ。西側製のさまざまな武器や装備品がウクライナ軍へ大量に供与された。その一部は破壊されたり、奪取されたり、さらにはウクライナ軍によって敵へ売却された。ドネツク人民共和とルガンスク人民共和国には現在、これらの戦利品が大量にある。それらを見たり、触ったり、分解したり、その書類を読むことなどができる。いくつかの種類の武器は、撃つこともできる。>(同上)。
両「人民共和国」が捕獲した米国製兵器を北朝鮮将校が購入し、ロシアを経由して北朝鮮に運ぶことも十分考えられる。
こうして北朝鮮はウクライナ戦争を自国の経済発展と防衛力強化のために最大限に活用しているのだ。実に狡猾(こうかつ)だ。
☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2002年5月、背任容疑などで逮捕され、09年6月に執行猶予付き有罪判決が確定した。20年、「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は「哲学入門 淡野安太郎『哲学思想史』をテキストとして」(角川書店)がある。











